エンターテインメント

どう人生をしまうか? 在宅死を追ったドキュメンタリーが話題の下村幸子監督に聞きました

2019.09.05

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――同じ映像でも、テレビと映画はだいぶ違うのですね。

配給会社の方をはじめ、多くの方からアドバイスを受けましたが、自分で思っていた以上に違いましたね。テレビの場合、視聴者に伝わっているか、つい心配になってしまうんですけど、映画はもっと観客に預けてよいのだと。最初は字幕で説明も入れていたのですが、そうすると読んでしまうから、最小限でいいんですよと、配給の方にいわれて。そうやって思い切って説明を省くことで、先生と患者さんのやり取りでストーリーが展開するようにすると、不思議と部屋のなかの様子など、いろいろなものも見えてくるんです。


――何度か映る、小堀先生の後ろ姿が素敵でした。

とても80過ぎには見えませんよね(笑)。

――200日間、密着した先生方を、下村さんはどうご覧になりましたか。

小堀鷗一郎先生は、患者さんとのコミュニケーションをすごく大事にされる方です。先生の、患者さんとのやりとりを見ながら、ことばの力について考えさせられました。たとえば先生は、あるお婆さまに“今日はいい目をしているね”って話しかけた後で、“眼差しっていえばよかったな”って、つぶやいていて。そんなふうに言い方、声のかけ方をいつも考えているんです。映画に出てくる103歳のお婆さまも、先生に膝を褒められて、“やだ、先生”って、急に少女に戻ってしまったり(笑)。小堀先生はこの人は何が好きか、何をいえば元気になるか、話しながら探っているので、先生と話すと皆さん元気になるんですよ。視覚障害のある娘さんがいる末期の肺がん患者さんとも、病気の話はまったくせず、最後は、家族で楽しめるようにと庭先に植えたという柿の話だけをされていて。

――そのお宅では、カメラも毎回、柿の木の色づき具合を映していました。

その患者さんも柿というと、ぱっと目が開いて(笑)。小堀先生は、そういうことをキャッチするのがとても上手なんです。一方の堀越洋一先生は寡黙な方で、多くを語らないけれど、診療の最後に患者さんの肩に手を置いて、“何かあったらすぐに来ますからね”とおっしゃるようにとてもやさしい。在宅医療の最後の武器は薬なんです。患者さんの状況に合わせて痛みをどう抑えるか、薬によるコントロールを綿密に計画するのですが、堀越先生はつねにそのことを勉強されている。おふたりを見ていると、ゴールは一緒だけれど、アプローチの仕方はそれぞれだということがわかります。

――看護師やケアマネージャーの方たちも素晴らしかったです。

やはりチーム医療の力は大きいと思います。堀ノ内病院は大病院ではありませんが、本当に志の高い方々が集まっています。病院の在宅診療チームの年齢層は高いのですが、年配の方は自分と近い世代だと話がしやすいこともあるようで、年齢を重ねたからこそ患者さんに掛けられることばもあると思います。
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