エンターテインメント

どう人生をしまうか? 在宅死を追ったドキュメンタリーが話題の下村幸子監督に聞きました

2019.09.05

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――医療や生と死というテーマは、以前から関心のあることだったのでしょうか。

自分が病気をしたのを機に、より「命の現場」に興味を持つようになったのだと思います。病気の後、研修医の番組や、東日本大震災の証言記録シリーズを撮るために東北に通うなど、命の現場に関わる機会が不思議と増えていきました。


私が初めて自分でカメラを回したのは、2013年にER(緊急救命センター)のある沖縄の病院で研修医の方々を取材させていただいたときです。予算の都合などで、プロデューサーに“自分で撮影すれば”といわれ、ロケの前日に机の上にカメラの取扱説明書が置かれていて(笑)。それで見よう見まねで撮影して60分の番組を制作しました。

今回も長期になるであろう取材だったので、なによりも先生方や患者さん、ご家族への負担を最小限にするためにも、自分でカメラを回すことにしましたが、沖縄での経験があったことで決断できました。

――映像を見ているとカメラを意識している方もいて、カメラの影響力は小さくないなと感じました。

カメラが回っていることで、普段は口にしないことを話す方もいるので、そういう意味でもカメラの力は大きいと思います。今回も、2階の自室から1年間以上、出ていない奥さんを、ずっとひとりで介護してきた夫のところで、それを感じました。奥さんは認知症を患っているのですが、家にお邪魔しているとき、“何もできない自分のことをすべて面倒見てくれるなんて、こんなお父さんと出会えたのは奇跡よね。お父さんのこと拝まなきゃ”とおっしゃって。そのときカメラを夫に向けたら、本当にびっくりした顔をされていたんです。あとで尋ねたら、あんなこと、奥さんは今まで一度もいったことなかったというんです。奥さんは見ず知らずの私が撮影していたから、普段思っていながら口にできなかったことを伝えられたのかな、と思いました。

――ひとりで介護することの負担を懸念した在宅医療チームの勧めで、ご主人は介護サービスを利用します。ご主人はプロの仕事に感服していましたが、奥さんは逆に不機嫌になってしまって……。

奥さんはご主人のことが大好きなので、2人の世界に他者が入ったことで不機嫌になったのでしょう。ただその変化について、だからどうすればいいということではなく、これもひとつの事実として提示しています。

映画では、ご家族の状況、現実について、こう見てほしいという作為はできるだけ外して、見る方にそれぞれの立場で感じ、受け止めてもらいたかったので、ナレーションによる説明も敢えて入れませんでした。

――テレビで放映されたときも、ナレーションはなかったのですか。

テレビでは入れていますね。BS1スペシャルの放映時は、取材の経緯を私の一人称コメントで書いて、あとNHKスペシャルでは、在宅死を巡る状況を客観コメントとして書いたものをアナウンサーに読んでもらいました。

テレビではメッセージ性を打ち出す方向で制作しましたが、映画はこのテーマに興味のある方が、映画館に足を運んでくださいます。在宅医療の現場に私と一緒に立っている感覚で見てもらって、何を感じるかは見た人それぞれに委ねる、そういうスタンスで再編集しました。

 
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