『ひよこ太陽』
田中慎弥 著/新潮社 1550円小説の中で編集者から“田中さん”と呼ばれるように、主人公は作家自身を思わせる“私”。
3年前、原稿を書きさえすれば飢えることはなさそうだと実家を離れ、東京で生活を始めたものの、なかなか書けない状況が続いている私は、東京に住んでいるという理由から母親に、彼女の友人の息子で消息の途絶えているGを探してほしいと頼まれる。
書けない自分に何か刺激になるのではとGを探し、その様子を小説に書いたことで、Gを名乗る人間から手紙が届き......。
編集者、一緒に暮らしていた女や母親、誰かといても独りでいても影を落とす書けない不安を凝視する作家の、妄想と背中合わせの危うい日常を力強い筆致で描いた連作短編集。
表示価格はすべて税抜きです。
取材・構成・文/塚田恭子
『家庭画報』2019年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。