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最終回は地元ピカルディーを。そして、フランス移住1年目で大決心したこととは?

2019.07.31

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意外となんとかなる!? 40代のフランス移住 Season2

ファッションライターとして家庭画報をはじめ、大人の女性に向けた雑誌で活動してきた河島裕子、改め、ルロワ河島裕子が、夫の故郷であるフランスに家族3人で移住することを決意。42歳で初の海外移住を遂げ、その初心者ならではの目線で移住ライフの模様をお届けする、エッセイ連載第2弾。フランス北部の田舎での生活、そして伝統行事や子供のこと、フランスの地方を旅した模様などをリポート。シーズン2の最終回は、移住後の1年を過ごしたピカルディ地方や近隣地域の見所&文化をお届けします。前回のエピソードはこちら>>>

第5回 北フランスで過ごした1年間



あっという間に過ぎた移住1年目


昨年9月にフランスに居を移して、早いもので間もなく1年が経とうとしています。息子の学校も7月上旬に終業、長い夏休みに突入しました。慣れない暮らしと、新たな生活基盤を構築するための準備で、時間の流れが光速のように感じた1年でした。

ところで私たち家族が居を構えるピカルディ地域圏(近年隣接する地域圏と合併され、現在はオー=ド=フランス地域圏と呼ばれるらしいです)のオワーズ県は、パリのあるイル=ド=フランス地域圏のすぐ北、そのすぐ西にはノルマンディー地域圏があり、この10か月で様々な北フランスの名所を訪れました。


今回は北フランス移住生活総集編ともいえる、観光だけではなかなか出会えない、この地域の魅力をお伝えしたいと思います。

北フランスって何があるの?


我が家のあるピカルディ地方は、この連載のシーズン1の第1回でお伝えしたとおり、観光客の方からの印象も薄く、悲しいかなフランス人の間でもあまりパッとしない印象だとか。

しかし、フランスの王侯貴族たちによって築かれた、風光明媚なシャンティイやピエルフォン、コンピエーニュなどのお城や、アミアン、ボーヴェの大聖堂(連載第6回でご紹介)など、歴史的な建造物も残っています(が、残念ながら正直それ以外の歴史的建造物が思い浮かびません)。

そんなピカルディはあまり耳にしたことがなくとも、世界遺産モン・サン・ミッシェルや、この連載の第7回でもご紹介した港町オンフルール、高級リゾート地のドーヴィル、チーズで有名なカマンベールなどを擁するノルマンディーには訪れたことがある方も多いのではないでしょうか?

我が家からも車を西に20分も走らせれば、もうそこはノルマンディー地域圏。パリからも1時間半ほどで行ける人気のジヴェルニーも、ノルマンディーにある名所の一つです。


印象派の巨匠モネの家があることでも知られるジヴェルニーは、我が家から車で1時間。交通の便が悪い田舎に、こんなにも観光客が集まるのか!と衝撃を受けました。観光客の一番のお目当てである「モネの家」の庭には、季節の花々が咲き乱れ、大混雑も納得の美しさでした。

北フランスの料理はバターたっぷり!


車を走らせれば、そこここに牛さんたちが放牧されている北フランスは、乳製品の産地。北フランスの料理には、もちろん、たっぷりのバターやクリームが使われています。

北フランス生まれ&北フランス育ちの義母は、バターとクリームがとにかく大好き! なんと、うっかり目を離すとパスタにもバターを絡めてしまいます……。

そんなピカルディ地方の一般家庭では、ベシャメルソースを使った料理をよく作るようです。日本でもおなじみの「グラタン ドフィノア」(ポテトグラタン。これはドフィネ地方の郷土料理ですが、もはや国民食)や、私も大好きな「アンディーブ オ ジャンボン」(チコリとハムのグラタン。どうやらベルギーや北フランスの郷土料理のよう)、そしてピカルディー名物「フィセル ピカルド」などなど。どれもクリームや牛乳、バターたっぷり……。健康を気にしている方には安易におすすめできない、濃厚な美味しさです。


「フィセル ピカルド」は、キノコとハムのベシャメルソース和えをクレープで包み、チーズをかけてグラチネ(オーブンなどで焼き色をつける調理法)したもの。

40代で味わうフランス移住一番の試練とは


しかしフランス移住後1か月ほど、そんなヘビーな食事が連日続き、私はすっかり乳製品食傷気味に……。

2か月間フランスで過ごした20歳の時は、美味しいバターやチーズを毎日食べられることが日々の喜びだったのに、43歳の今は、あれほど好きだったチーズも週に数回厚さ5mmほどのかけらをかじる程度。すっかり乳製品を分解するパワーがなくなってきた胃袋に、自分の年齢を感じるこの頃です。

そう、40過ぎでのフランス移住で一番心と体にこたえているのが、和食制限であることは間違いありません(田舎では、なかなか美味しい日本食材が手に入りません)。と同時に、きっと同居している義母も私たちに気を使い、大好物のバターとクリームを彼女なりに控え、ぐっとこらえているに違いないと考えると、大変申し訳なく思うのでした。

ちなみに義母の母(つまり夫の祖母)も同様にバターとクリーム、そしてお砂糖たっぷりの甘いものが大好きだったそうですが、大病もせず97歳の長寿を全うしたというから、これはもう日本人とは体のつくりが全く違うのですね。

お城で有名なシャンティイは、あのホイップクリーム発祥の地!


ところで、我が家から車で30分強のピカルディが誇る美しい街、シャンティイ(もしかしたらシャンティイ在住の方はピカルディの一員であることを全く意識していないかもしれませんが)は、「クレーム シャンティイ」、つまりホイップクリームの発祥の地としても有名。

ルイ14世の頃、シャンティイ城の宮廷料理人であったヴァテールが発明したと言われています。アイスクリームを食べても、ケーキを食べても、やたらと名物クレーム シャンティイがついてくるような土地柄です(私の経験からのイメージ)。

どうやらシャンティイ城の敷地内にあるレストラン「ラ・キャプテヌリー」や「アモー」で味わうことができる“元祖クレーム シャンティイ”なるものは、マスカルポーネチーズのように濃厚で、それを主役にいただくもののようですが、実は私、シャンティイには何度も足を運んでいながら食べたことがありません。興味のある方、ぜひお試しください。


残念ながら、本場の「クレーム シャンティイ」未体験のため写真がありませんが、ホイップクリームを生んだ国フランスのウィンナコーヒーには、クレーム シャンティイがこれでもか!と盛られていました。

気軽に海に出られるのも、北フランスの魅力!


ご存じ六角形に近い形をしていることから「ヘクサゴン」(ヘキサゴン)とも呼ばれるフランスの国土。

ノルマンディーやノール、ブルターニュ、大西洋岸、プロヴァンス、コートダジュールなどの地域を除き、多くの地域が内陸に位置しており、フランスのど真ん中に住んでいる人たちにとって海に行くことは、ちょっとした贅沢。冬には人っ子一人いないような北部の海岸にも、夏になると「どこからこんなにやってきたのか!」と思うほど人であふれ、小さな街が賑わいます。

我がピカルディも内陸部ではありますが、ノルマンディーとノールに隣接しているため、車で1時間半もあれば白い砂浜が続くリゾートに到着します。島国日本で生まれ育った私としては、この思い立った時に海に出られる環境にどれほど心救われたことか。そんなとき、自分のアイデンティティを強く実感するのでした。


今年の夏、息子の学校が休みになる水曜日に、ふと思い立って海へ。我が家から車で1時間半のフォール=マオン=プラージュは、文字どおり見渡す限り砂浜が続く、美しいビーチ。大胆な水着を着ているご年配の諸先輩方も多く、大いに勇気づけられました。

北の魅力は馬なしでは語れない!


さてさて、私が北フランスで一番魅力に感じているのが、「馬のいる生活」です。と、言っても我が家で馬を飼っているわけではありません。我が家に隣接した隣人の牧草地には、季節によって馬が放牧され、その景色を楽しむことができます。いやぁ、なんとも贅沢です! 何しろ、我が家の周辺には、馬を飼っている人がたくさん。

もちろん、子供の習い事としても乗馬は大人気で、近所の子供たちが自分のポニーを世話している様子も見かけ、その一生懸命な姿に心もほっこり。北フランスの人々の馬への愛を感じずにはいられません。

馬のいる生活がもたらすセラピー効果


また、幼い頃から乗馬をライフワークとしてきたというノルマンディーの義父の家には、常時5〜10頭の馬がおり、その美しい姿を間近で眺めることができます。私たちは月に1回程訪れるのですが、そのせいもあってか我が息子は馬が大好き!

義父の家に着くとすぐに厩舎へと走り、滞在中の多くの時間を、馬を眺めて過ごしています。どうやら息子にとっては、何よりも心の癒しになるようです。

ただ悲しいかな、動物アレルギーを持つ私は、お馬さんの毛にも敏感に反応してしまいます(そのため、馬に乗ることができない私の叶わぬ願望を、今回冒頭のイラストで実現してみました)。鼻が大洪水&白目がゼリー状に腫れてきてしまうため、長時間厩舎にいることができないのが残念ですが、生まれて間もない子馬とその子を守ろうとする母馬の親子愛を目の当たりにした時には、なんとも感動したものです。


産後1か月の母馬に人参をあげる息子。お馬さんは美味しそうに人参を平らげてくれ、息子も大満足でした。

1年慣れ親しんだ北フランスにお別れ。そして……


そんな魅力を日々発見していた北フランスでの移住ライフでしたが、私たち家族は、夢に向かい別の地方へ移り住むこととなりました! フランス移住直後に始まった家探し、そして人生初の不動産購入、異国での銀行ローン申請……。ここでは語りきれないほどのハプニング続出の珍道中(おかげで白髪が一気に増えました)。

実は、まだ本契約が済んでいないので、この後の移住ライフはどうなるか全くの未知数ですが、もし無事に次なる地に移り住むことができた暁には、再び、このエッセイ連載でその模様をお伝えさせていただきます。では、またいつかお会いしましょう!

ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy

ファッションライター
『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。2018年9月より、家族とともに、生活拠点をフランス北部の田舎に移す。夢はワインの聖地・ブルゴーニュでB&Bを営むこと。パリで道ゆくおしゃれな人に体当たり取材する「パリ、大人のおしゃれの見本帳」を家庭画報.comで連載中。

「40代のフランス移住」 シーズン1はこちら>>>
フランス移住こぼれ話
ある日、車で息子を学校に送っている途中、地域の保育園の前を通り過ぎた時でした。3歳くらいの女の子が、自分の体の半分くらいはある巨大なぬいぐるみを持って、保育園に入って行くのです。 聞けば、フランスの子供たちは皆、“DOUDOU(ドゥドゥ)”という、寝る時やお出かけ時にもいつも一緒の特別なアイテムがあるのだそう。フランスでは赤ちゃんの頃から1人で(両親と離れて)寝る習慣があることから、パパ&ママと離れていても夜寂しくないように、愛着のあるものと一緒に寝るのだとか。 それは、ぬいぐるみであったり、ブランケットやタオルであったりするのですが、それを両親と離れて過ごす保育園(幼稚園)にも持参できるのだそうです。 ちなみに5歳までを日本で過ごした我が家の息子には、フランスに移り住む以前は家族3人で川の字になって寝ていたこともあり、特定のドゥドゥがありません。 しかし、この5歳まで家族3人で寝ていたことが、義母からは「教育によくない」と大不評!(温厚な義母が、この件に関しては恐ろしく嫌な顔をして、危うく嫁姑問題に発展しそうでした)。そんな義母の日々の厳しいチェックもあり、フランスに来て半年過ぎた頃、ようやく自分の部屋で、1人で寝られるようになった息子でした。
写真/Olivier Leroy、ルロワ 河島 裕子 イラスト・文/ルロワ 河島 裕子
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