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ビオって何? BIO先進国フランスの食事情をフランス移住1年生がリポートします!

2019.07.17

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意外となんとかなる!? 40代のフランス移住 Season2

ファッションライターとして『家庭画報』をはじめ、大人の女性に向けた雑誌で活動してきた河島裕子、改め、ルロワ河島裕子が、夫の故郷であるフランスに家族3人で移住することを決意。42歳で初の海外移住を遂げ、その初心者ならではの目線で移住ライフの模様をお届けする、エッセイ連載第2弾。フランス北部の田舎での生活、そして伝統行事や子供のこと、フランスの地方を旅した模様などをリポートしていきます! 今回は、多くの人が関心を持つフランスの“BIO(ビオ)”事情について、2回にわたりお届けします。 前回のエピソードはこちら>>>

第8回 BIO先進国フランスの食文化に触れる<前編>




 

2つの美食大国、日本とフランスの違いとは?


日本とフランスは、世界でも屈指の美食大国(あくまで世界をさほど知らない私の個人的な見解です)。自国の料理だけでなく、他国の料理文化や調理法もどんどん取り入れて、それぞれを極めながら独自に進化させていく食への貪欲さも、両国民に共通しているような気がします。


ただ、何が違うのかというと、食材やそれを育む土壌の安全性への関心度。
「フランスはBIO大国」という話をよく聞きますし、実際にフランスに移り住んだ日本人の方たちも、日本との意識の差を感じているといいます。

BIOとは?


ちなみにBIO製品とは、日本でいうところのオーガニック(有機栽培由来)製品のことです。フランス農務省が認可する有機栽培(Agriculture Biologique・アグリキュルチュール ビオロジック)由来製品に対しては「ABマーク」と呼ばれるマークがつけられ、それが政府認定のBIO商品であることの証。そしてそれとは別に、欧州基準のオーガニック認可マークもあります。

今回は、移住初心者の私自身も勉強しながら、いつもより真面目に(いえ、いつも真面目なつもりですが)皆さんにフランスの食&BIO事情をお届けしたいと思います。


我が家行きつけのスーパーにも大きなBIOコーナーが。

全国津々浦々、田舎だってビオの選択肢は豊富


いやいや、日本だって今やオーガニックや食材への意識はかなり浸透してきた、と思う方も多いかと思います。私が昨年まで住んでいた東京の世田谷区にも、自然派食品専門店が増えてきたし、スーパーマーケットにオーガニックコーナーがあったりしました。

しかし日本では、オーガニック食材はかなり割高ですし、そういうお店に日々足を運んだり、必ずオーガニック食材を選ぶという人の割合は、まだまだ高くないような気がします。

私の受けた印象では、フランスのBIO(オーガニック)への意識は、日本の何倍も進んでいる気がします。まず、パリなどの大都市に限らず、BIO専門店は簡単に見つかりますし、田舎の一般的なスーパーであっても、かなりのスペースをBIOコーナーを割いています。

フランスのBIOブームの始まりは80年代に遡る


私が13年前にパリに旅行で訪れた時は、パリ市内でBIO専門店がかなりの勢いで増えていた時期で、フランス人の食への意識の高さに驚いたのを覚えています。

また30年の歴史を持つラスパイユのマルシェなど、パリにはBIOに特化した市場もいくつかあり、世界的なオーガニックブームが起こるずっと前から、フランス人が食の安全性に関心を持ってきたこともわかります。

ちなみにフランスで実際に多くの人がBIOに関心を持ち始め、社会的なムーブメントとなったのは、狂牛病が社会問題となった2000年頃なのだとか。

フランスでのBIO製品の価格は?


価格も以前は日本のように相当な割高感があったようですが、現在私がよく行くスーパーマーケットでは、約1.1~1.4倍といった印象で、物によってはBIOでないものと価格に大差がないものもあります。

個人的には乳製品や野菜・果物は比較的価格差が小さく、肉や魚はかなり割高に感じます。ですので、我が家はその時のお財布事情に合わせて、特に子供が毎日口にするものに関しては、できる範囲でBIOを選ぶようにしています。


2016年から日本にも進出しているフランス全国に店舗を展開する「Bio C’Bon」(ビオセボン)は、2008年に誕生したBIO専門の大手チェーン店。BIO専門店ながら求めやすい価格で人気。

世界最大規模を誇る卸売市場には、BIOパビリオンが!


さて、パリ郊外には世界最大規模という、フランスの食を支える卸売市場「ランジス市場」があります。なんと230ヘクタール(想像がつきませんが、東京ドーム約50個分だそうです!)という途方もない広さの敷地に、肉、魚、青果、乳製品、花の各パビリオンがあるそうです。

いうなれば、東京の豊洲市場、芝浦の食肉市場、大田市場など、東京中の卸売市場が一緒になった(というか、一緒になってもまだまだ足元にも及ばない)スケールでしょうか。

パリに長年住む友人からの情報では、数年前このランジス市場にBIO専門のパビリオンができたそうです。彼女自身、このパビリオンができてから、朝市でもBIOのスタンドが増え、スーパーマーケットのBIOコーナーも随分と充実してきたと感じているそう。


日本では安価で価格が安定していることから、「価格の優等生」とも言われる卵。フランスでBIOの卵を初めて買った時その高額さに驚きましたが、オーガニックの飼料&放し飼いという安全な環境で飼育されていることを知り、納得。今ではBIO以外の卵を買うことはなくなりました。パッケージにある「ABマーク」はフランス農務省のBIO認定である印。その下の葉の形をしたマークは欧州基準のオーガニック認定印。

BIO製品はあらゆる食材に存在する!


BIOというと、有機栽培で育てられた野菜や果物をイメージする人が多いのではないでしょうか? しかし、その種類は実に多彩。

野菜や果物のみならず、肉、卵、魚、お酒やジュースなどの飲料、お菓子、パン、パスタ、シリアルなどの加工品まで、ありとあらゆる食材にBIOは存在します。さらにはトイレットペーパーや洗剤、石けん、化粧品などの生活用品も!

農作物の場合は100%有機農法、加工品の場合は95%がBIO由来のもので、残りの5%も自然に近いものが望ましいとされています。

1980年代にはBIO認可制度が法制化


ちなみに1980年代には、フランスでBIO認可制度が法制化。その基準は、BIO先進国の多いヨーロッパの中でも厳しいことで知られているようです。また減薬農法(Agriculture Raisonnée )も法制化されていて、フランスでは、自分の理念やスタイルによって食材を選べます。

そういえば、かつて、EU内でも基準の違いがあり問題となったそうで、2009年には「欧州基準をベースに、各国独自の基準を採用する」ということになったのだとか。ただし、欧州の基準よりも緩いオーガニックの輸入品に対しても、オーガニックとして受け入れている事実もあるようで、そこにはグローバル化がもたらすパラドクスもあるようです。


我が家では、息子がよく口にするものを中心に、できる範囲でBIO食材をチョイス。物価が日本よりも高いフランスでは、なかなか大変です!

オーガニック栽培の提唱は1世紀前から始まっていた!


化学肥料や農薬の多用による弊害によって、20世紀後半になってオーガニックが注目されてきたような印象がありますが、20世紀初頭にはその理念は存在していたようです。

神智学者であり教育者としても知られるオーストリアのルドルフ・シュタイナーが、自然と宇宙と調和した循環型有機農法「バイオダイナミック(ビオディナミ)農法」を、また同時代にイギリスの植物学者アルバート・ハワードが自然に基づく、化学肥料や農薬に頼らない東洋の農業に影響を受けたオーガニック農法を提唱するなど、今から1世紀も前から化学肥料や農薬に対する警鐘が鳴らされていたという土壌がヨーロッパにはあったことも、特筆すべき点です。

今、世界はオーガニック志向へ


ちなみに日本では明治時代に化学系肥料や農薬が最先端技術として輸入されて以来、これらが近代農業のスタンダードになっていったのですが、それ以前は当然有機農業であったわけです。

温暖多湿で害虫や天災との戦いも欧州に比べて圧倒的に大変な土地柄ですし、栽培している農作物も使用する農薬も異なるので、単純に良しあしを比較することはできませんが、1km2あたりの農薬使用量は、日本はなんと世界トップクラスなのだとか。

世界がオーガニック志向に向かう中、時に時代に逆行しているともいわれることもある日本の農薬事情ですが、農家の方(親戚に農業従事者が数人いるため、その涙ぐましい努力も耳にします)、消費者、そして地球にとっても良い未来が開くことを祈るばかりです。

さてさて、まだまだ語り足りないフランスのBIO事情。次回は農業大国フランスが抱えるジレンマをお伝えします。

ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy

ファッションライター
『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。2018年9月より、家族とともに、生活拠点をフランス北部の田舎に移す。夢はワインの聖地・ブルゴーニュでB&Bを営むこと。パリで道ゆくおしゃれな人に体当たり取材する「パリ、大人のおしゃれの見本帳」を家庭画報.comで連載中。

「40代のフランス移住」 シーズン1はこちら>>>
フランス移住こぼれ話
実は、わたくし、同サイトにて「パリ、大人のおしゃれの見本帳」という連載を担当させていただいています。 43歳にして人生初の路上ゲリラ取材を、しかも異国の地で担当することになり、初めて取材する日は心臓が口から飛び出るのではないかと思うほど緊張しました。さらには写真を担当するフランス人の夫から「パリの人は忙しい上、他人のことを気にしないから、そんな突撃取材を受けてもらえるわけがない」と、要らぬ入れ知恵をされていたこともあり、前日は不安にさいなまれ寝られなかったほど。 ところが当日、声をかけた人の8割近くが、快く撮影&取材に応じてくれるではないですか! ポイントは、私の超たどたどしいフランス語です。「エクスキューゼ モア」から始まる夫からレクチャーされた4センテンスのフランス語を、ひたすらオウムのように繰り返す修行のごとき数時間。 皆さん、覚えたてのフランス語を話す謎の外国人(私)を心配そうに見つめ、恐らくその同情心から取材に応えてくれるのでしょう。最近は“わざわざ東京からやってきた風情”(もちろんフランスに住んでいますが)を醸し出すことで、その成功率はさらに上がることを実感しました。スノッブ(お高くとまっている)と揶揄されることも多いパリジェンヌですが、皆さん、とても優しいです。
写真・イラスト・文/ルロワ 河島 裕子
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