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大きく進歩するがんの免疫療法。日本がん免疫学会理事長 河上 裕さんに聞いた最新動向

2019.06.14

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効果を上げるために腸内細菌を利用する


免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げる方法の1つとして期待されているのが、腸内細菌叢のコントロールです。

2018年に欧米で特定の腸内細菌を持っている人のほうが免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいとの論文が複数発表され、腸内細菌を免疫チェックポイント阻害薬と併用する臨床試験も始まっています。

「免疫療法の効果を上げる可能性のある特定の腸内細菌を使う場合と、免疫チェックポイント阻害薬がよく効いた人の糞便を移植するという2つの方法が考えられます。入れた腸内細菌が腸に居着きやすくするためには、抗生剤での前処置が行われます。ヨーグルトを毎日食べればよいというような単純なことではありません」と河上さん。


今後、さまざまな臨床試験が行われて、腸内細菌叢のがん免疫療法における意義がわかっていくと思われます。

「がんと免疫の関係はまだまだわからないことが多く、臨床試験でも参加人数の少ない早い段階ではうまくいっていても、大規模になると効果が既存の治療と比べて弱かったり、副作用が強かったりして開発が中止になることもあります。

しかし、うまくいかなかった場合にもその結果を分析することによって、新しい治療法が開発される可能性もあります。近い将来、遺伝子や細胞などのビッグデータ解析により、患者さんごとに個別化した、効果が高く、副作用が少ない新しい免疫療法の開発が進むことを願っています」と河上さんは語っています。




がんの免疫療法とは?どんな治療法なの?
〜免疫を調節するさまざまな分子に働きかける薬を使い、組み合わせることで効果をねらう〜


がんの治療は、手術・放射線療法・薬物療法が3大療法として行われ、免疫療法は第4の治療法として長い間研究されてきました(免疫チェックポイント阻害薬は「薬物療法」に入れられることもあります)。

がんの免疫療法には、大きく分けて、「自分の体内の免疫を増強する方法」と「免疫細胞を体外で増やし、それを体内に入れる方法」の2つがあります。

免疫チェックポイント阻害薬、免疫細胞を活性化する作用がある物質を入れるサイトカイン療法、がんのかけら(抗原ペプチド)などを入れて、がんに対する免疫を活性化する「がんワクチン」などは前者、本文で紹介したCAR-T療法などは後者です。

現在、従来の3大標準治療にこれらの免疫療法を加えたり、免疫療法同士を組み合わせたりして効果を高める「複合がん免疫療法」が期待されています。

がんの免疫療法には、免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T療法のように医薬品として承認された薬がある一方で、がんワクチンや、CAR-T療法を除くさまざまな免疫細胞療法は、まだ承認されていません。

科学的根拠がはっきりしない治療法も行われているのが現状で、自由診療でまだ承認されていない免疫療法については、主治医と十分に相談することが重要です。
取材・文/小島あゆみ イラスト/tokco〈LAIMAN〉(タイトル) にれいさちこ(本文)

「家庭画報」2019年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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