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がんの新しい免疫療法として注目の「免疫チェックポイント阻害薬」とは?

2019.05.08

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すべてのがんに効くわけではなく、重い副作用もあり得る


免疫チェックポイント阻害薬は、今のところ、すべてのがんに効く夢の薬ではありません。画像検査でがんが見えなくなるほど効く人がいる一方で、抗PD-1/PD-L1抗体薬単独で30パーセント以上の腫瘍縮小効果が認められる人は多くのがんで二割程度です。

免疫チェックポイント阻害薬が効くかどうかが治療前にわかるとよいのですが、まだ完全に見分けることはできません。

しかし、T細胞はがん細胞の遺伝子の傷をターゲットにしている場合も多く、遺伝子に傷が多いタイプのがん(例えば喫煙者のがんやDNAを修復する分子に異常があるがんなど)に効きやすいことはわかっています。


また、抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬は、がん細胞や周りの免疫細胞がPD-L1を出している場合に効果が高いことも知られています。

現在、これら以外にも、がん種ごとに、さまざまな効果予測マーカーが探索されており、新たに見つかったマーカーを組み合わせることで効果予測の精度が向上することが期待されています。

また、いつまで使用を継続すべきかについても現状では明確な答えはなく、臨床試験で確かめられる必要があります。

「海外の非小細胞肺がんの臨床試験で、一年で免疫チェックポイント阻害薬の使用をやめた患者さんよりも使い続けた患者さんのほうが生存期間が長くなる傾向が見られたとの報告もあります。他の治療法も含め、適切な治療のためには、免疫チェックポイント阻害薬を継続する目安を見つけることも望まれます」(河上さん)。

免疫チェックポイント阻害療法では、過剰な免疫反応が起こり、さまざまな臓器障害を起こす自己免疫性の副作用が出る場合があります。

甲状腺炎、膵臓炎(糖尿病)、下垂体炎などホルモンを作る臓器に自己免疫性の副作用が出ると、自己免疫反応を抑制するステロイドなどの免疫抑制剤やホルモンの補充が必要となります。

心筋炎や間質性肺炎など命にかかわる自己免疫性副作用も出ることもあるので、医師だけでなく、患者自身も早く気づいて適切な治療を受けることが重要です。

承認時より薬価はかなり下げられましたが、患者負担と国の医療費を押し上げる点も懸念されており、今後の工夫が必要になります。

とはいえ、免疫チェックポイント阻害薬をさまざまな薬剤や放射線療法などと併用する複合がん免疫療法の臨床試験が米国を中心に1000件以上進められており、適応がん種や使い方の拡大が期待されています。

また、価格を下げるための製剤の工夫や、新しいタイプのがん免疫療法の開発も進められています。免疫チェックポイント阻害薬を中心としたがん治療はこれからもどんどん広がることは間違いないといえるでしょう。

免疫チェックポイント分子の発見と阻害薬の開発の歴史は5ページ目を参照>>
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