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松田龍平さん、井上ひさしさんが書いた宮沢賢治役で舞台初主演

2019.02.28

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同じ役を日々繰り返し演じる演劇ならではの出来事とはいえ、一見クールで淡々とした松田さんの中に、役や芝居に対する思いがマグマのように潜んでいることが伝わってくるエピソードだ。

そんな松田さんを“この世の淵に立つことのできる極めて稀有な俳優”と表現する長塚さんは、『イーハトーボの劇列車』を最初に読んだときから、賢治役に松田さんをイメージしていたのだそう。松田さん自身は、今回の役をどう感じているのだろう?

「賢治の台詞や生き方には感じるものがあって、影響を受けるところもいろいろあるだろうなと思っています。


そもそも僕は、人の意見に対して“それもありだね”という感じで、意外とこだわりなく影響を受けてしまうほうなんです。

自分が信じるものが、本当に信じられるものなのかわからない。そういう立ち位置に自分をあえて置いておく。

それはある意味、中途半端ともいえるし、自分がないともいえる。だから、何度挫折してもブレない宮沢賢治に憧れるというか、魅力を感じるのかなと思います。

ポジティブな見方をすれば、それで今回の舞台をやりたいと思ったのかもしれませんね」

そのニュートラルなスタンスが、いかにも松田さんらしい。そこから醸し出される唯一無二の存在感は、間違いなく彼の大きな魅力の1つだ。

「でも、自分としては常に、絶対に譲れないものや信じられるものを探してはいます。そのほうが面白いじゃないですか。強いこだわりがあれば、それに対して違う意見も出るだろうし、そこから議論も生まれてくる。

そうすると、役の演じ方も変わってくる気がします。自分ができる範囲ではあるけれど、そろそろ自分が思い描く面白いことを、形にしていったほうがいいんだろうなとも思っています」

デビュー20周年を迎えた35歳は、次のステージに向かいつつあるのかもしれない。最後に、俳優になってよかったと思うのはどんなときですか?と尋ねると、「たくさんあります。俳優になっていなかったら、いったいどうなっていたんだろうって思いますよ」と笑顔を見せた。

「やっぱり好きですね、演じることが。今回の舞台も楽しみです。劇中で歌う場面もあるんですよ。前に舞台で歌ったときは音痴な役で、すごくストレスが溜まったんですが、今回は楽しく歌えそうです。

圭史さんに詰め寄られるようなことは、さすがにもうないと思いますが(笑)、またそれくらいのめり込めたら幸せですね」

松田龍平/Ryuhei Matsuda

松田龍平/Ryuhei Matsuda

1983年、東京都出身。1999年に俳優デビュー。以降、映画を中心に活躍を続け、2013年の映画『舟を編む』では、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ国内の主要な主演男優賞を総なめにする。出演映画『影裏』が2020年に公開予定。
こまつ座公演
『イーハトーボの劇列車』


『イーハトーボの劇列車』

2月5日~24日 紀伊國屋ホール
全席指定8800円 学生割引き券5000円 こまつ座
TEL:03(3862)5941
11日夜に追加公演が決定。各回すべて当日券あり。また、3月に山形、岐阜、兵庫、富山、宮城、熊本、大分、広島、大阪公演あり。

作/井上ひさし 演出/長塚圭史 出演/松田龍平、山西 惇、岡部たかし、村岡希美、土屋佑壱、松岡依都美、天野はな、紅甘、小日向星一、福田転球、中村まこと、宇梶剛士
表示価格はすべて税抜きです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/増田 慶 ヘア&メイク/須賀元子〈星野事務所〉 スタイリング/TAKAFUMI KAWASAKI〈MILD〉

「家庭画報」2019年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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