日本が誇る伝統工芸に携わるかたがたとともに製作した、現代の暮らしを豊かに彩る家庭画報オリジナルの逸品をご紹介します。
撮影／本誌・鈴木一彦
季節の便りや、お礼の品に添えるメッセージなど、仰々しくしすぎずに、感謝の思いを込めたい…そんなときに活躍してくれるお洒落なレターセットとご祝儀袋が誕生しました。
すっきりと洒脱な文様「稲妻」と「よろけ縞」を淡い水色で全面に染めたハガキは、裏面が無地のため、メッセージカードにも使えます。「文入り菱格子」を鮮やかな紅色で染めた一筆箋は、共柄の封筒付き。
手前から時計回りにハガキの「稲妻」、「よろけ縞」、一筆箋と封筒のセット。幾何学的な文様のため時季を問わず使える。
一緒に考えてくださったかた
三枝政代（さえぐさ・まさよ）さん子ども服とベビー用品の専門店「ギンザのサヱグサ」会長夫人。洒落た家庭料理をテーマにした料理教室が人気。今年4月、ギンザのサヱグサを銀座4丁目に移転オープン。
「ちょっとした贈り物にひと言添えたい場合、封筒に入れるだけで丁重な印象になりますね」と話す三枝政代さん。贈り物上手の三枝さんならではのアイディアを提案してくださいました。こちらのご祝儀袋もその一つ。そっと渡したいお心付けも、真四角のご祝儀袋にすればお札を三つ折りではなく二つ折りにして入れられます。
稲妻とよろけ縞を染めたご祝儀袋は、二つ折りにしたお札がちょうど収まるサイズ。小さなプレゼントを入れるのにも最適。
レターセットとご祝儀袋はともに、職人の手で丁寧に彫った伊勢型紙を用いて手作業で染められています。手のひらにのる小さな紙の上に繰り返される精緻な文様には、人の手だからこそ生み出せる美しさとあたたかさが宿っています。
精巧な職人技による伝統文様の美に大切なかたへの思いを託して柄や文様をきものの生地に染めるために用いられてきた伊勢型紙は、生産の中心地である三重県白子・寺家地区が江戸初期に徳川御三家の一つである紀州徳川家の天領となったことで、藩の庇護のもと発展を遂げました。
和紙を柿渋で貼り合わせた地紙に、文様を丹念に彫って作られる伊勢型紙。その技法には、錐を回転させながら微小な穴を彫る「錐彫り」、刃先の鋭利な小刀で垂直に突くようにして彫り進める「突き彫り」、刃先が花や菱などの形になっている彫刻刀で文様を彫り抜く「道具彫り」などがあり、他に類を見ない特徴的で高度な技術を要する彫刻技法が今に受け継がれています。
ほんのわずか刃先が乱れるだけで、柄に狂いが生じ、その型紙は使えなくなってしまう。こちらまで息をつめてしまうほどの緊張感が工房に漂う。
また、伊勢型紙の意匠には自然を題材とした伝統的なものから、当時の人々の遊び心を感じさせるモダンなものまで、無数のデザインが残されています。小さな型紙に何千回と繰り返される彫りにはわずかな狂いも許されません。でき上がった型紙の息をのむほどの美しさは、気の遠くなるような忍耐と根気、長年培われた職人技の賜物です。
一筆箋と封筒に染めた文様「文入り菱格子」を彫った型紙。白い部分が彫り抜かれており、格子はわずか0.5ミリほどの細さ。
家庭画報×伊勢型紙 レターセットとご祝儀袋のご購入方法
写真上から「ハガキ」稲妻、よろけ縞各350円。「一筆箋と封筒」便箋2枚、封筒1枚入り1250円。「ご祝儀袋」稲妻、よろけ縞各600円（すべて税抜き）。購入をご希望のかたは、日本の伝統工芸品を取り扱うセレクトショップ「日本百貨店 とうきょう」の店頭、またはオンラインショップにてお買い求めいただけます。
日本百貨店 とうきょう
東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東日本東京駅構内地下1階 グランスタ内
TEL：03（6268）0597
日本百貨店オンラインショップ
URL：
http://shop.nippon-dept.jp/ ※商品は一つ一つ手作りのため、仕上がりが写真とは少々異なる場合があります。
『家庭画報』2017年5月号掲載
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
