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大原千鶴の心に残るレシピ「ちらし寿司」

2019.03.01

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私の心に残る味 3月

ちらし寿司

しいたけやかんぴょうに焼き海苔。けっして特別な材料ではないけれど、私のちらし寿司にはかかせないもの。娘にも伝えていきたいわが家の味です。詳しいレシピは次ページ>>

ちらし寿司


料理・文/大原千鶴


小さい頃のご馳走、ちらし寿司。今でも大好物です。

大所帯だったうちの家では、直径1メートルほどの大きな盤台で作ります。今でもちょっと田舎風の家庭的なちらし寿司を見ると、大量の寿司飯を大きなおしゃもじで混ぜながら、一生懸命ちらし寿司を作っている祖母の姿を思い出します。

うちはお料理屋さんなのでお醬油やお酢などの調味料が一升瓶に入っており、その一升瓶の口に親指をあて、その隙間で量を加減しながら味つけをします。

祖母は小柄で腰が曲がっていたにもかかわらず、その一升瓶を自分の目の高さよりも上に振り上げて指の感覚だけで味加減をします。

その姿を見ながら子供心に「ようそんなこと出来るなぁ〜」と思っていました。経験ってすごいです。

そんな風にして作られるちらし寿司に入っているものといえば、干ししいたけや人参など、たいしたものではありません。でもなぜかちらし寿司の日は嬉しくなります。

まぁお寿司を作る日は元来ちょっとお祝い事であることが多いので、非日常の嬉しい日であることもあります。

ちらし寿司を作るためには、しいたけを戻したり、人参を細く切ったり、錦糸卵を焼いたりと、手順が色々あり、その1つずつに手をかけて作るところにえも言われぬご馳走感があるから、嬉しい食べ物なのだなと思います。

おうちによってかんぴょうや高野豆腐が入ったり、かまぼこや紅ショウガをのせたり。京都も丹波の方に行きますと、鯖のそぼろがのっていたりして、どのおうちにもその家らしい味があるのがまた良いのです。

こういった関西のお寿司は寿司飯が甘めで、なま物がのらないからその甘さがまたご馳走なのです。

冬の間はこのちらし寿司を蒸して熱々のものを京都の人はいただきます。底冷えする京都だからこその食べ方です。

お雛様の頃になれば少しずつ春が近づいてくるのが判ります。春らしい菜の花色の錦糸卵をたっぷりのせて、お水取りの椿を模した大きめの杯で白酒とともにいただきながら、春の訪れを楽しみに待つといたしましょう。
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