きものダイアリー

中村萬太郎さんが語る、歌舞伎座『十二月大歌舞伎』

2018.12.10

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歌舞伎新世代がナビする「きもので観劇」其の十二(最終回)

「先輩方が受け継いできた古典を学びつつ そろそろ“自分の色” を色々な場面で出していきたい」


中村萬太郎

耳に心地良いよく通る声と目に心地良い美しい所作で、世話物を中心とした芝居でも舞踊でも観客の心に強い印象を残す中村萬太郎さん。2018年も多くの演目、役柄に挑戦しました。

萬太郎「自分の中で一番思い出深いのは、3月に国立劇場でつとめた『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』の勝奴です。歌舞伎の世話物の芝居では『魚屋宗五郎』の三吉と対比されることが多い役ですが、主役に対する立ち位置は似ていますが、似ている分だけ違いも際立つ役。三吉は純朴ですが、勝奴は7対3くらいの割合で悪い奴。完全な悪党ではありませんが、真っ当な人間でもありません。僕は素では三吉に近い“純朴はいいヤツ”ですので(笑)、勝奴の一見、人は良さそうでありながら犯罪にも平気で手を出すような人物像には苦労しました。また、勝奴は小道具を出したり片付けたりと、芝居の中での仕事も多い役です。だからといって裏方のサポートに徹してしまうと芝居は面白くありません。さりげなく仕事をしながらも、もっとグイグイと前に出て行っていいんだ、というのは、演ってみてわかった部分でしたね」。


『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』のような世話物の芝居は、萬太郎さんが共演する機会の多い菊五郎劇団の真骨頂。舞台に登場するどの役も、江戸の街にはきっとこんな人物がいたに違いない、と感じさせます。

萬太郎「江戸の風情や江戸っ子らしさ、と言っても、今はどんなにお年を召したお客様も役者も、実際には江戸時代を体験している訳ではないので、一種のファンタジーではあります。そんな中で“江戸の男ってきっとこうだったんだろうな”と感じていただけるよう、自分なりの空気を作っていきたいですね。そのためには、舞台でいかに回数を重ね、先輩方の醸し出す江戸の風情を身近に浴びることができるかだと思っています。

萬太郎さんにとって、2018年に残るもう一つの舞台が、名古屋 御園座で尾上松緑さんの親獅子とともに踊った『連獅子』です。

萬太郎「『連獅子』は親子の役者で踊る方も多い演目ですが、ウチは父が女方ということもあり、僕は同世代でも珍しいことに獅子の毛を振る経験がないまま、この年まで来ました。今年、松緑のお兄さんの胸を借りて踊ることができたのは、とても嬉しかったですね。小さい頃から拝見する機会が多かったのは藤間流のご宗家の振付による『連獅子』でしたが、今回は藤間流家元の振付。勢いがあって、お客様にも楽しんでいただけたのではないでしょうか。仔獅子と言えども子供扱いされないように、親獅子に立ち向かっていく感じが出せるようつとめました」

形の美しさやキレのある動きで、舞踊にも定評のある萬太郎さん。今後、踊ってみたい演目はあるのでしょうか?

萬太郎「キビキビと体の動く演目がいいですね。男女のラブラブな舞踊劇は体がむず痒くなってしまって…。兄(女方の中村梅枝さん)と踊るなら『吉野山』などでしょうか」

12月は歌舞伎座昼の部で『幸助餅』の三ツ扇屋帳場平兵衛をつとめます。

萬太郎「松竹新喜劇の作品を歌舞伎化した、上方の人情話です。僕はお芝居を拝見したことはなかったのですが、落語は聞いていて、『文七元結』や『芝浜』にも通じるところのある話だと思いました。でも、恩の返し方に江戸と上方の文化の違いが感じられて面白いです。慣れない関西弁の台詞に苦労していますが、上方出身のお弟子さんにイントネーションを教えてもらいながらつとめます。
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