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進化する「がんゲノム医療」の現状と未来について。一人一人のがんには違いがある

2018.12.14

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ドライバー遺伝子
〜がんの発生や増殖に直接かかわる遺伝子で、それを抑える分子標的薬が開発されている〜


私たちの細胞には、がんを発生・増殖させる「がん遺伝子」や、がんにならないように抑える「がん抑制遺伝子」があります。

このように、がんの発生や増殖に直接かかわる遺伝子を「ドライバー遺伝子」と呼びます。ドライバー遺伝子は、がんの進行に向かってアクセルを踏む遺伝子なのです(がん抑制遺伝子が異常になったときにはブレーキが壊れたというイメージです)。


ドライバー遺伝子のいくつかにはその異常に対応する分子標的薬が開発されており、該当する遺伝子変異を持っているかどうかを生検や手術で採取したがんの組織を用いて、コンパニオン診断薬で検査をすることがほとんどです。

例えば、肺がんのうちの非小細胞肺がんでは、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異のコンパニオン診断薬が保険承認を得ており、免疫チェックポイント阻害薬を使う際のPD-L1検査とともに標準的に調べることになっています。

また、乳がんや胃がんではHER2遺伝子変異やHER2たんぱく質の発現量などを調べます。さらに乳がんでは抗がん剤の効果や再発のリスクを遺伝子やたんぱく質で調べる検査が実用化されており、自費診療で治療が始まる前に受けられます(マンマプリント、オンコタイプDX)。

血液を用いて遺伝子異常を調べる「リキッドバイオプシー」の開発も進んでいます。

がんと遺伝子と分子標的薬
〜2010年代から遺伝子変異に合わせた分子標的治療が大きく発展〜


1915年
山極勝三郎がウサギの耳にコールタールを塗ってがんを生成させ、化学物質によってがんを人工的に再現できることを示す。

1953年
米国のジェームズ・ワトソンと英国のフランシス・クリックがDNAの二重らせん構造モデルを提唱する。

1975年
DNAシーケンシング法が開発され、DNAの塩基配列が読めるようになる。

1989年頃
p53遺伝子ががん抑制遺伝子であることが明らかになってくる。

1998年
HER2遺伝子変異、HER2たんぱく質過剰発現の乳がんに対する分子標的薬トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が米国で承認される(日本での承認は2001年)。

2000年
ヒトゲノム全配列の概要が解明される。

2001年
慢性骨髄性白血病の分子標的薬イマチニブ(商品名グリベック)が米国、日本で承認される。

2002年
非小細胞肺がんの分子標的薬ゲフィチニブ(商品名イレッサ)が世界で初めて日本で承認される(2011年、EGFR遺伝子変異陽性患者に適応変更)。

2007年
非小細胞肺がんの一種の原因となるALK融合遺伝子を自治医科大学(当時)の間野博行教授(現・国立がん研究センター研究所所長)が発見。治療薬として2011年に米国、2012年に日本でクリゾチニブ(商品名ザーコリ)が承認される。その後、多くの分子標的薬が承認されている。

中釜 斉(なかがま ひとし)さん

中釜 斉(なかがま ひとし)さん

1956年生まれ。1982年東京大学医学部卒業、90年同附属病院第三内科助手。91年、米国マサチューセッツ工科大学がん研究センター 研究員。95年に帰国し、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)研究所 発がん研究部室長、生化学部長、副所長、所長を歴任。2016年から現職。ヒト発がんの環境要因および遺伝的要因の解析とその分子機構の研究を専門とする。
取材・文/小島あゆみ イラスト/(c)tokco〈LAIMAN〉にれいさちこ(本文)

「家庭画報」2018年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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