アルバム＆ツアー“WALK”も好評！ 布施 明さんが伝える歌の醍醐味

俳優としても活躍。三谷幸喜さんの映画『ラヂオの時間』『みんなのいえ』、ミュージカル『オケピ！』にも出演している。

――布施さんご自身も曲や詞を書かれるではないですか。ご自身で作詞・作曲された「落ち葉が雪に」という名曲もありますし、今回のアルバムにも３曲書き下ろされています。

「今回のように、こういう曲が欲しいんだよなあという時に書くことはあります。でも正直に言うと、僕はそれはいいことだとは思わない。


誰かが詞を書き、曲を作り、アレンジをしたものに、どうやってまた違う命を吹き込んでいくかというのが、歌手としてのいちばんの醍醐味だから。

本当は、作詞家や作曲家が作った歌を、自分で違う形にしていくのがいいと思っています」

――違う形に、ですか？

「歌というのはイメージ＝景色だと思うんです。それも、同じ詞やメロディでも、受け取り手によって違って見える景色。

つまり、歌う人間が、その歌を作った人と同じ景色を歌うことはできないし、それを聴いてくれる人が同じ景色を見るとは限らないわけです。

たとえば“駅”という言葉一つとっても、人によって思い浮かべる駅は違いますよね？ だから、あえて細かく説明しない。

そうすると、歌を作った人が思う駅と、歌う人が思う駅と、それを聴いた人が思う駅の景色は、全部違ってくる。それが歌のいちばんの面白さだと僕は思うし、それぞれの中に“歌が生きる”ということだと思っています」

――歌のイメージが豊かに広がっていく……素敵です。ご自身が歌われる際には、どんなことを心がけているのですか？

「過去のことでも、未来のことでも、現在のことでも何でもいいんですが、聴いてくださる方それぞれの人生に、ほんのちょっとでも触れる何かがあったらいいなと思って歌っています。

上手く表現できないんですが、ある一瞬、“ああ”と思ってもらえるような歌であったらなと。

まあ、大抵はその前に自分が“あーあ”となってしまうんですが(苦笑)。一歩でも半歩でも前進していけたらと思います」