エンターテインメント

パリでも花開く坂口安吾×野田秀樹の世界。『贋作 桜の森の満開の下』

2018.09.19

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1989年の『贋作 桜の森~』初演と92年の再演では、自ら耳男を演じた野田さん。今回は2001年版に続いて、ヒダの王役で出演している。

――ロンドンには、当時主宰していた「劇団夢の遊眠社」を解散した92年から1年間留学なさっています。きっかけは何だったのでしょう?


「それこそ、今回のジャポニスムみたいな日本特集を企画するために来日していたエディンバラ国際フェスティバルのフランク・ダンロップという委員長さんが、『宇宙蒸発』(ワルハラじょうはつ/85年)を観に来てくれたことです。伝統芸能以外で何か面白いものはないのか?と尋ねる彼に、話のわかるいい役人が薦めてくれたらしくて(笑)、パッと観て気に入って、エディンバラに来る気はあるか?と声をかけてくれた。で、その1年半くらい後にエディンバラ国際フェスティバルに参加して、帰りにロンドンに寄ったんです。しばらく滞在して現地の芝居をたくさん観たんだけれども、やっぱり自分らとは演劇の横縦の時間が違うなと感じて」

――演劇の縦横の時間の違いというのは?


「つまり、当然長い時間稽古をして、現在として使っている時間が長いであろう上に、歴史的な縦の時間も非常に長くて深いんだろうなと感じたわけ。それが劇団を解散してロンドンに留学したいと思うようになった直接のきっかけですね。劇団員みんなで行ければよかったんだろうけど、その頃はみんな、結婚したり、子供ができたりして生活が大変だったし、俺も段々、劇団を続けることは自分が演劇を始めた頃の志とは違うことじゃないかと思うようになって」

――どんな留学生活だったのでしょう?


「久々に味わった、朝から晩まで演劇のことだけ考えていればいい生活でしたね。劇団員をどうやって食わせようとか、そういうちまちましたことも考えなくてよかったし。とにかく芝居をたくさん観たいと思って、街の小さなホールから郊外でやるものまで調べ上げて、1年で200本以上観ました。そこで一緒に芝居をつくれる仲間とも出会えたわけだから、そういう意味でも有意義でしたね、あの1年は。以降、台本はイギリスで書くようになりました。集中できるし、合間に芝居も観られる。そして、今日のこれがあるというわけ」

――今回の舞台は、今の野田さんの一つの集大成だと思えてきました。とはいえ、戯曲が書かれたのは野田さんが33歳の時。近年の作品以上に言葉遊びが満載で、フランス語への翻訳が大変そうです。


「だと思います。今の自分には思いつかないようなイメージが、泉のように湧き出ているし。でも、『エッグ』でもお世話になったいい翻訳者がいるんです。村上春樹作品をフランス語に翻訳している人で、『エッグ』が好評だったのも、その翻訳によるところが大きいかもしれない。今回も直訳というより、エッセンスやテイストを生かして訳してくれると思います。きっと村上春樹の作品のほうが訳しやすいでしょうけどね(笑)」
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