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繊細にして可憐。京染和紙をあなたなら、どう使う?

2018.08.03

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型紙の柄向きに裏話あり


「おそらく約300種類はあると思います」という柄は、江戸時代から昭和初期にデザインされたもので、先代からの型紙を傷めないように大切に使い続けています。着物の染めに使う型紙であるため、仕立ての際、生地を効率よく使えるようにと柄は上下を意識させない配置になっているのもポイント。かつて、大村しげさんの自宅の一部を店舗にして運営されていた「手作りの店 峯」(※)には、多数の工芸品が並んでいました。浅井長楽園の京染和紙もそのひとつです。※大村さんの友人が、若手作家の工芸品を集めて始めた店。大村さんの自宅の玄関口が店舗として提供され、普段は大村さんも執筆の傍ら、店番をしていました。

今回、「手作りの店 峯」の特注で作られた和紙を拝見しました。通常は柄に上下がないはずですが、ご覧の通り、こちらは柄の密度で上下が付けられているほか、何度も版を重ねる手の込んだ多色仕上げとなっています。

京都 浅井長楽園「手づくりの店 峯」の依頼で製作されていた特注の京染和紙。柄は左が「絵羽蝶」、中央と右が「風車」です。現在も浅井長楽園で1枚から注文できます。価格は型染めのものが1枚594円(税込み)、型刷りのものが1枚432円(税込み)です。


「絵羽蝶」と「風車」をよく見てみると……。素人目にはわかりにくいのですが、左右が型染めで、中央が型刷りです。

40年前の和紙人形ブームとは?


大村しげさんの著書には、幼少期に母親に紙の人形を作ってもらった思い出が綴られています。

「お人形さんは、桃割やら島田に結うてはった。そのお人形に、どんなものを着せようかと、一生懸命に考えて、それがどないうれしかったことやら。(中略)近ごろまた、紙人形が大はやりで」(『冬の台所』冬樹社)。

この本が発行されたのは1980年。「40年ほど前に和紙人形ブームがあった」と浅井さんと奥さま。当時、和紙店などの主宰による人形教室が全国に作られ、京染和紙が材料としてとてもよく売れたそうです。

京都 浅井長楽園先代の時代に作られた和紙人形(私物)。右奥の京うちわは現在、販売されている商品です。

京都 浅井長楽園

Washi Can(和紙缶)はお茶を入れるだけでなく、小物の収納にも活躍します。全部で4サイズあり、写真は小サイズ(直径6×高さ7cm)。1個540円~(税込み)。 ※使用する和紙によって価格が変わります。

インターネットで京染和紙が世界に広がった


「高校卒業から家業を手伝い始めて4~5年で和紙人形ブームは終わりました」(浅井さん)。しかし、家業を継いだ浅井さんは、和紙の小物を作り、京都クラフトセンター(※)で展示販売をするようになります。先代の時代にも端切れを使った折り紙やしおりなどは作られていましたが、それを奥さまがより良いものへと工夫を重ねました。これが人気となり、人形ブームが去ったあとも、京染和紙は新たな魅力を発揮することに。

「京都の職人は、どうしても仕事をもらうのを待つだけの受け身になりがちです。自分で発信しないと伝統工芸は先細りになってしまいます」と、浅井さんは2004年からは独学でホームページを作成し、和紙の魅力を紹介。すると、海外から注文が入るようになり、現在はアメリカやイタリアのお店でも取り扱われています。また、イタリアのフォトグラファーから「ファッション撮影の衣装の一部として京染和紙を使いたい」との依頼が届いたこともありました。最近ではLEDランタンのシェードに京染和紙を使った製品など、時代に合わせた提案も行っています。※京都・祇園にあった工芸品の展示販売を行う施設。2008年に活動を終了した。

京都 浅井長楽園こちらは金色の柄を載せた型刷り和紙。柄の緻密さに目を見張ります。

額に入れて和紙を飾っていた


「このごろ、こういう染め紙やら木版摺りの千代紙を、額に入れてたのしんでいる(中略)。年とともに、和紙へよせる思いは、つのるばかりである」(『冬の台所』冬樹社)と大村しげさんは、和紙の楽しみ方を紹介して文章を締めくくっています。浅井さんによれば、「手作りの店 峯」の店先には、額装された浅井長楽園の和紙が飾られていたとのこと。

繊細なものから大胆なものまで揃えられた多彩な柄。ぬくもりを感じさせる手触り。額装された芸術品や人形、小物へと姿を変える浅井長楽園の和紙を、あなたなら、どんなふうに使ってみたいですか?

Information

浅井長楽園

  • 取扱店はホームページ上に紹介されています。 京染和紙の価格は1枚378円(民芸紙)、または540円(楮100%の手すき和紙)。 作業中は電話に出られないことが多いため、FAXかメールにてお問い合わせください。 FAX :075-791-3023 メールアドレス: y.asai@gamma.ocn.ne.jp  

川田剛史/Tsuyoshi Kawata

フリーライター
京都生まれ、京都育ち。ファッション誌編集部勤務を経てフリーライターとなり、主にファッション、ライフスタイル分野で執筆を行う。近年は自身の故郷の文化、習慣を調べるなか、大村しげさんの記述にある名店・名所の現状調査、当時の関係者への聞き取りを始める。2年超の調査を経て、2018年2月に大村しげさんの功績の再評価を目的にしたwebサイトをスタートした。
http://oomurashige.com/
取材・文/川田剛史 撮影/田村朋子(トライアウト)
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