きものダイアリー

中村種之助さんが語る、国立劇場『双蝶会』

2018.07.13

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「“うれしい”。でも“かなしい”。相反する表現が、物語の世界を深めます」


『義経千本桜 川連法眼館の場』(通称『四の切』)は、静御前が手にする“初音の鼓”にまつわる物語。中村種之助さん演じる源九郎狐は、この鼓の革に使われている狐の子。親を慕って、静御前に従う佐藤忠信に姿を変えてともに旅をし、源義経のもとにたどり着いたところで正体をあらわして、最後は義経から鼓を与えられます。主人公が狐というファンタジックな設定や、親子の情を描いた物語は、子どもから、海外の方、歌舞伎初心者にまで楽しめる演目ではないでしょうか。

種之助「京都・南座での『百物語』や、藤間流の踊りの会での『吉野山』と、これまでにも狐や忠信を演じる機会があり、それもふまえて、前から挑戦したかった演目です。今回父に習う音羽屋型では、ケレンといわれる派手な演出よりも心の部分に重きを置き、親を慕う子狐の情を中心に演じます。親狐が鼓にされているって、よく考えてみると残酷な部分のあるお話ですよね。親が犠牲になった“初音の鼓”を与えられて子狐が喜ぶ場面では、ちょっとほろりとします。“うれしい”と“かなしい”。演じるのとは反対の部分をどこかに持って芝居をすることで、物語がより引き立つこともあるのかもしれません。僕自身が先輩がたの舞台を子どもの頃から見て感じてきたような気持ちに、お客様にもなっていただけたらと思います」中村種之助さんが語る、国立劇場『双蝶会』

人間の忠信と狐との演じ分けも、このお芝居の眼目です。


種之助「物真似でもそうですが、完璧なコピーよりも特徴的な部分を強調する方が伝わることってありますよね? 人間から見て狐っぽいな、と感じた部分が歌舞伎の型になっていったのでしょう。あと、個人的には、けものは人間ほど物事を複雑には考えないんじゃないかな、と思っています」

一方の『積恋雪関扉』では良峯少将宗貞を演じます。

種之助「舞踊劇で、これだけの長さのある大作は、あまりありません。雪が降っているのに桜が咲いている……こういう設定を思いつく歌舞伎ってスゴいなと思います。それぞれの役の衣裳も独特。台詞も含め、美しく不思議な世界を楽しんでいただきたいですね」

日頃から“役そのものになる”ことを目指すと口にしている種之助さん。

種之助「歌舞伎は、同じ演目を違う役者が演じるので“役者を観る芝居”という一面もあります。でも、これだけ離れた時代や奇想天外な物語でお客様の共感を得るには、現実を忘れていただくことも大切です。舞台の上での最終目標は、役の人物になること。演じている役者がどんな人間かといった先入観をもって舞台を見られることは、僕としてはまだ、望んでいません。だから、普段は何をしているとかいったプライベートなことは、なるべく内緒にしておきたいんです」
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