ファッション

知花くららさんがまとう、涼を呼ぶ夏の織り

2018.07.10

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涼を呼ぶ夏の織り 第1回(全3回)

風をまとう、極上の夏の織り。その衣は、作家たちの心が発露した類い稀なる美を醸し出します。独自の技で作品を生む重要無形文化財「紋紗」保持者・土屋順紀(つちや・よしのり)さん。

そして、「縠織(こめおり)」の海老ヶ瀬順子さんと「生絹(すずし)」の佐野美幸さんの作品も加え、知花くららさんが、今、最も美しい夏の織りをまといます。

知花くららさん

「夏の織りに焦がれて」檀 ふみ



友人の女優・名取裕子さんと一緒に、きものの会に行った。「回り道、寄り道、脇道、きもの道」を歩いて、ようやく「いま」に辿り着いたという「きもの美人」の名取さん。

美しいうすものを肩にのせながら、「でも、着る機会があるかしら」と、とつおいつする若い人に、「女っぷりを上げるのは、断然、夏のきものよ!」と、力説していた。

そのうすものに、最初に手を伸ばしたのは、私たちである。色は淡い緑。ちょっと朽ち葉の黄みがかかっていて、まさに私たちの年頃の色。しかし柄行きを見て、ガッカリした。どう考えてもお嬢様向き。

だけど、こんな地味な色が若い人に似合うものかしら……と、半信半疑で当ててみてもらって、感心した。似合うのである。若さに深みのようなものが加わるのだ。

もちろん、うすものの力、がある。襦袢の白を少し感じさせて、思ったよりはんなりした印象を与える。袷ではこうはいくまい。名取さんのおっしゃる「女っぷり」も、こうした涼やかな透け感が、重要なポイントとなるのだろう。

「回り道、寄り道、脇道」は、一緒の私。若い頃に、あんなきものに出会っていたかったと、つくづく思った。はじめてのうすものは、白地の訪問着。「夏物は汗染みがねぇ」という母のつぶやきに、着たらなるべく早く脱ぐことだけを心がけ、きものを楽しむ余裕も何もなかった。

ほんとうに夏のきものの美しさを知るようになったのは、上布を手にした40代からではなかったかと思う。夏の鋭い光線のもとで、静かに輝く草木染めの色。風を感じさせる、軽やかさ。織物の本質は、ここにあるのではないかとさえ思った。

「羅(うすもの)や人悲します恋をして」

残念ながら、鈴木真砂女(まさじょ)のような経験はないけれど、大好きなうすものをまとうたびに、そんな、渦中のオンナとなれそうな気分に浸っていることは、事実かもしれない。

きもの「晃」 きもの/土屋順紀(矢代仁) 帯/桝屋髙尾 帯揚げ/和小物さくら 帯留め18万円/山清堂 帯締め/道明 バッグ198万9000円/シャネル

「晃」
光を通すほど薄く織られた紋紗のきもの「晃」は、平成28年日本伝統工芸展に出品された作品。

槐(えんじゅ)の黄色で5段階に染めたグラデーションにより、光が八方に輝く様をデザインしたもの。黄色に藍をかけた緑でぼかし上げた裾の色彩が、爽やかさを増幅させます。

綟(もじ)り織りと平織りで織り出す石畳文様がきらりと見え隠れし、独特の風合いが心地よい一枚。

きもの「晃」

きもの「晃」/土屋順紀
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