来日版を観たのは27～28歳の頃。25年の時を経て、アーチボルドを演じる日が来るとは、縁を感じずにいられない。 ――心の変化を音楽で表現しているのですね。
「ええ。一方で、歌い手にとっては非常に技術を要する、けれども歌いがいのある楽曲のオンパレードになっています。各キャラクターそれぞれに名ナンバーを持っていて、なおかつそれがデュエットになっていたりするので、きっと美しいメロディが好きな人にはたまらないと思います。僕がいちばん好きなのは、息子のコリンがメアリーと歌うナンバー。聴いている人がワクワクするようなメロディです」
――そんな中で石丸さんの役は、なんだか辛そうです。
「そうですね。アーチボルドは、最愛の妻を亡くした喪失感から心を閉ざし、現実に向き合うことができないでいる。彼の気持ちに寄り添う時間が増えると思うので、僕もちょっと偏屈な人になるかもしれません(笑)。チラシにもデザインされている鍵は、亡き妻リリーが大事にしていた花園の扉の鍵なんですが、それはアーチボルドの心の鎧の鍵でもあると思っています。その鍵を開けて飛び込んできたメアリーが、アーチボルドを変え、メアリー自身も変わっていく。原作をご存じの方にも、小説の世界が美しい音楽とともに目の前に立ち現れるさまをぜひ体験してほしいですね」
――リリー役は、今回が3作目のミュージカル共演となる花總まりさんです。
「最初にご一緒した『モンテ・クリスト伯』では婚約者役、その次の『レディ・ベス』では先生と生徒の間柄、今回は亡くなってはいるものの夫婦役ということで、楽しみにしています。花總さんの持っている透明感や儚さみたいなものは、リリー役にぴったりだと思いますし、彼女が宝塚(歌劇団)時代に培ったこともフルに生かせるんじゃないでしょうかね。美しいドレス姿も披露しますし、社交ダンスのような動きがあるシーンでは踊るかもしれませんし。そこも楽しみの一つです」
