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なぜ京都に利尻昆布が? 名物「木の芽煮」誕生秘話

2018.04.27

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炊いて、冷まして、刻んで、寝かせて


木の芽煮の製作の様子を拝見して、手間暇のかかることに驚きました。木の芽煮に使うのは夏まで生育させてから土用に収穫し、夏の強い日差しで天日干しした山椒の葉。また5月に収穫した実山椒は塩漬けにして保存しておき、年間を通して木の芽煮の具材に使用します。

大村しげの記憶を辿って私だけの京都へ「くらま辻井」こちらは一晩かけて保存時の塩気を抜いた実山椒と葉山椒。まず昆布を煮てから、炊き合わせます。

炊き合わせにはしょう油(濃い口2種類、薄口1種類の計3種類をブレンド)と水を混ぜ合わせた特製の煮汁が使用されます。炊く前に水ではなく、このしょう油と水をブレンドした煮汁で昆布を洗浄。これは炊いている途中で昆布から余計な水分が出て味が変わらないようにするための工夫です。そこに実山椒と葉山椒を入れ3時間から3時間半、火力調整をしながら炊き続けます。炊き上げる時には、しょう油が徐々に煮つまり、窯の底が焦げつかないよう、混ぜ続ける必要があります。


火を落としたら2時間半ほど窯の余熱で蒸らし、煮汁はすくっておきます。昆布が冷めたら細かく刻んで、煮汁をかけて旨味を引き出し、さらに数日寝かせて味をなじませたら、木の芽煮の完成。大変な労力と時間を必要とすることが、おわかりいただけたでしょうか。

大村しげの記憶を辿って私だけの京都へ「くらま辻井」混ぜ合わせる作業は船のオールのような大きなしゃもじで。この大きな窯ひとつで、約400~500パック分の木の芽煮を炊き上げることができます。

ご飯に混ぜるのがお気に入りだった


大村しげの記憶を辿って私だけの京都へ「くらま辻井」「くらま辻井」の看板商品、木の芽煮。83g 540円(税込み)。日本各地の催事などで実演販売をしているので、ぜひWebサイトをチェックしてみてください。

「大村しげ先生はスプーンに2、3杯とって、ご飯に混ぜて食べるのがお好きとおっしゃっていました」と大女将。しょう油の味がしみた昆布、ピリリとする山椒。山の幸と海の幸の豊かで強い風味があれば、ご飯のほかはなにもいらないというのは納得です。

木の芽煮は昆布、山椒の葉をしょう油で炊いたものを細かく刻んでいるのが特徴。山椒の葉の繊維は大きいため、刻むことでそれぞれの具材の味のバランスや食感が均一になるのです。大村しげさんの時代には、両手に大きな包丁を持つ職人が向かい合って木の板の上で昆布を細かく刻んでいました。街道を歩けば聞こえてくるトントン、トントンとリズミカルな包丁の音を、大村しげさんは「山里の暮しの音色やろうか」(『京の食べもの歳時記』)と綴っています。

手作業の時代はベテランの職人が丸一日がかりで10kgの昆布を刻むのがやっと。しかし、時代とともに作業は機械化され、大村しげさんの聞いた包丁さばきの音色は過去のものとなっています。
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