ジュエリー

ヴァン クリーフ&アーペルのヘリテージから紐解く 「アール・デコ」のジュエリーが表現するもの

2025.11.27

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〔特集〕パリ『アール・デコ博』から100年 女たちの「アール・デコ」フランスで花開いた「アール・デコ」は2つの世界大戦の間におこった芸術運動です。より女性が社会進出していった時代、デザインにはどんな変化が起こったのか? アール・デコのジュエリーを中心に、時代を紐解きます。前回の記事はこちら>>

特集「アール・デコ」の記事一覧はこちら>>>

ヴァン クリーフ&アーペルのヘリテージから紐解く
「アール・デコ」のジュエリーが表現するもの

アール・デコ博覧会から100年の節目となる今、東京都庭園美術館で開催中の「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル― ハイジュエリーが語るアール・デコ」の展示作品から、時代が生んだ新しいスタイルをキーワードとともにご紹介します。

幾何学的に再構築された様式美

アール・デコ博覧会(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)の宝飾部門でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》1924年(Pt、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション ©Van Cleef & Arpels

アール・デコ博覧会(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)の宝飾部門でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》1924年(Pt、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション ©Van Cleef & Arpels

すっきりと幾何学的な線とパターン化されたモチーフによる構成はアール・デコ期の芸術潮流の一つ。この時期を象徴するバラの花を表現したブレスレットは自然のモチーフまでもが幾何学的に様式化されたことを示している。赤と白のバラが交互にあしらわれているデザイン。

左右対称の立体美

《コラレット》1929年(Pt、エメラルド、ダイヤモンド)エジプトのファイーザ王女旧蔵

《コラレット》1929年(Pt、エメラルド、ダイヤモンド)エジプトのファイーザ王女旧蔵

20年以上にわたるアール・デコの時代にはいくつかのスタイルが同時進行したが、対称性という流行はすべてに共通していた。カボションカットを施したエメラルドとダイヤモンドの色の対比も鮮やかなネックレスは、複層構造による立体感も見事。 リボンに通してチョーカーまたはブレスレットとしても着用できる。《ブローチ》1927年 (Pt、ダイヤモンド)すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション ©Van Cleef & Arpels

リボンに通してチョーカーまたはブレスレットとしても着用できる。《ブローチ》1927年 (Pt、ダイヤモンド)すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション ©Van Cleef & Arpels

ジュエリーに見出された多様性

《セルクル ブローチ》 1931年(Pt、WG、ダイヤモンド)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

《セルクル ブローチ》 1931年(Pt、WG、ダイヤモンド)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

衣服だけでなくイブニングバッグなどにもつけられるブローチは、女性たちが「装う自由」を手に入れたこの時代ならではの産物。ピンがなく、バネ式の蝶番(ちょうつがい)で開閉する。

《ネックレス》1929年 Pt、ダイヤモンドヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

《ネックレス》1929年 Pt、ダイヤモンドヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

中央の結び目に留め具が施され、胸や背中に垂らすことも肩にかけ留めることもできるネックレス。男性的な要素を取り入れたファッションが台頭した時代にネクタイからデザインされた。

ネックレスのデザイン画 1929年ヴァン クリーフ&アーペル アーカイブス

ネックレスのデザイン画 1929年ヴァン クリーフ&アーペル アーカイブス

女性の社会進出に伴う機能と美の両立

時代が生み出した技術や意匠を日常に取り入れた女性たち

「1925年にパリで開催されたアール・デコ博覧会(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)の宝飾部門において『ヴァン クリーフ&アーペル』のブレスレットがグランプリを受賞したことは、創業からまだ20年に満たないメゾンのサヴォアフェール(匠の技)を世に知らしめる機会となりました」と、ヴァン クリーフ&アーペルのプレジデント兼CEOのカトリーヌ・レニエさん。

装飾美術と技術革新が一つになったアール・デコの時代に、それまでにはなかった機能やデザインが生み出された、と語るのは、ヴァン クリーフ&アーペル パトリモニー&エキシビション ディレクターのアレクサンドリン・マヴィエル=ソネさん。

幾何学的な意匠が時代を感じさせるアール・デコ後期の作品。女性の七つ道具を収めたちいさなケースである《ミノディエール》1935年(YG、Pt、ブラックラッカー、ダイヤモンド、ルビー)

幾何学的な意匠が時代を感じさせるアール・デコ後期の作品。女性の七つ道具を収めたちいさなケースである《ミノディエール》1935年(YG、Pt、ブラックラッカー、ダイヤモンド、ルビー)

バッグにしのばせたり、クラッチとして持つこともできる《カメリア ミノディエール》 1938年(YG、ミステリーセットルビー、ルビー)すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

バッグにしのばせたり、クラッチとして持つこともできる《カメリア ミノディエール》 1938年(YG、ミステリーセットルビー、ルビー)すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション© Van Cleef & Arpels

「たとえば、口紅やパウダーコンパクト、ライター、ノートなどを収めるミノディエールは、女性のライフスタイルの幅が広がった時代ならではのアイテムです。時計もまた、女性がさまざまな場所に進出したことでモダンで実用的に進化しました。ジュエリーだけでなくファッションや建築などさまざまなジャンルに共通して日常の中に美と技が持ち込まれ、誰もが楽しめるようになった新しい時代。さらに、ダイヤモンドを研磨する技術が発展したりプラチナが用いられるなど、質の高い素材を用いてのイノベーションの始まりでした。そしてそれは、21世紀の今に至るまで続いているのです」。

女性が公の場で時計を見る行為がエレガントでないと考えられていた時代、さりげなく時刻を確認できる文字盤の角度を計算した《カデナ リストウォッチ》1943年(YG、ルビー)

女性が公の場で時計を見る行為がエレガントでないと考えられていた時代、さりげなく時刻を確認できる文字盤の角度を計算した《カデナ リストウォッチ》1943年(YG、ルビー)


永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ
会期/~2026年1月18日(日)
会場/東京都庭園美術館
観覧料/一般1400円、大学生(専修・各種専門学校含む)1120円、高校生・65歳以上700円、中学生以下は無料(予約不要)
https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/
※日時指定予約制

(次回へ続く。この特集の一覧>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年12月号

家庭画報 2025年12月号

取材・文/清水井朋子

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