〔連載〕タサン志麻の田舎暮らし・冬(最終回) 志麻さん一家が購入した古民家がある静かな里山で、家族5人の新しい暮らしが始まりました。季節ごとの豊かな自然や食材を、志麻さんの視点でお届けします。
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保存食で日々の食事やおやつを豊かに
文・タサン志麻
20歳の頃、留学中にフランス人のお宅に招かれた時、必ずといっていいほどルームツアーをしていただきました。地下室がある家にはワインや保存食がぎっしり並んでいて、これは庭の木の実で作ったジャム、こっちは何年に漬けたピクルス、などの説明を聞いていると、いつかこんな生活をしてみたいなぁとうらやましく思ったものでした。
あれから月日が経ち、憧れの環境へ生活の基盤を移したところ、家の周りには梅や栗や柑橘の木がいっぱいあり、実が少しずつ大きくなっていく様子を感じながら、季節の移り変わりを楽しむように。保存食も少しずつ作りはじめました。
「これなあに?」と香りを確かめながら、自分の頭より大きく、ずっしりと重い晩白柚を抱えるしょうちゃん。
塩漬けや砂糖漬けはとても簡単で、シンプルなだけに使いやすい保存食です。一度にたくさん採れてしまう柑橘も、保存食にすれば長く楽しむことができます。塩漬けにして発酵すると酸味も味わいもやわらかくなり、うまみが増すので料理に使うとコクが出ますし、実は和食にも合うんです。
柚子は保存瓶に入れて塩漬けに。柚子のほか、レモン、きんかんなど、この時季の直売所にはあらゆる柑橘類が並ぶ。大きなものはザボンの一種・晩白柚(ばんぺいゆ)。
砂糖漬けの柑橘はケーキやチョコレートのお菓子に使えます。とりわけ我が家はみんなチョコレートが大好きで常備しているので、時間がある時にはチョコレートのおやつをよく作ります。チョコレートを刻んだり、溶かしたりするうちに、子どもたちがつまんでどんどん量が減っていくのですが、そんなつまみ食いも美味しくて楽しいもの。
その中でもたった3つの材料で作れるチョコレートムースを、食後のデザートとしてよく作ります。子どもたちが口の周りにチョコレートをいっぱいつけて大好きなチョコレートムースをほおばる姿が見たくて、作りながらワクワクしてしまうほど。そして同じチョコレートムースを高温のオーブンでさっと焼くだけで、フォンダンショコラのようなふわっとした食感が生まれます。材料は同じなのにちょっとしたことで食感や、風味が変わるのも、お菓子作りの面白さなのかもしれません。
私たちの田舎暮らしははじまったばかりですが、これから家族で果物や野菜を作りながら、季節の料理やお菓子作りを楽しんでいきたいと思っています。
みなさんにも「心が豊かになる食事」について考え、笑顔が溢れる食卓を目指して、料理を作ること、食べることを楽しんでいただけたらうれしいです。
リノベーション中の家の裏には複数の柚子の木が自生する。日が入るようにロマンさんが手入れをすると、大きな柚子がたくさんなるように。
タサン志麻(タサン・しま)料理人と家政婦の経験で培った技やセンスが光る柔軟なレシピが大好評。2023年、古民家を購入して夫のロマンさんとリノベーションや開墾に奮闘中。3人の子どもと猫2匹、犬1匹と暮らす。
(次回に続く。
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