ワインが生まれた場所で、造り手の想いに触れる滞在が叶う宿を、2軒ご紹介します。都会の喧騒から離れ、静かにワインに向き合う優雅な時間をお過ごしください。

山梨県甲州市の福生里(ふくおり)にある「STAY366」(ステイ サンロクロク)。ワイナリーが手がける、ブルワリーを併設した宿泊施設として注目を集めています。その名前に込められているのは、「365日の日常の先にある、特別な非日常を体験してほしい」という想いです。

ワイナリー「98WINEs」(キュウハチワインズ)を率いる平山繁之さんは、「ワインは場所文化」という考えのもとに、「ワインの品質は、人や技術ではなく『場所』が造るもの」と考えます。例えば、その年の環境が作ったぶどうを、極力、人の技術や力などの“意思”を介入せず醸造しています。土地が本来持つ力──平山さんの言う「場所・文化」──を尊重する姿勢を、ワイン造りの根幹として捉えているのです。
平山さんは、2017年に「98WINEs」を設立し、その後、この「STAY366」に挑戦しました。「ここは、宿というよりもワイナリーの一部として考えています。ワインを楽しみに来た方へのおもてなしとして、ワインとお食事を楽しんでいただき、宿泊できるという場所を作りました」と平山さん。
客室は全3室で、ゆったりと静かな時間を過ごしてほしいという想いから、1日に宿泊できるのは最大2組まで。それぞれの部屋に、北欧やヨーロッパなどのアンティーク家具が美しく配置されています。泊まった人が“わくわくできる”空間を目指して、同じ建物内のビール醸造所を上から見学できる部屋も。
同ワイナリーのワインは、ローカルのぶどうで、なおかつ海外でもワイン用ぶどうとして認められた、甲州とマスカット・ベーリーAの2種のみを使うという潔さです。 ぶどう農家に焦点を当てたワインづくりを行う「セブンシダーズワイナリー」が手がける「7c(セブンシダーズ)villa&winery」。2023年に、観光客が集う「旅の駅 kawaguchiko base」に隣接してオープンしました。富士河口湖町初のワイナリーが手がける宿に、国内外から注目が集まっています。
2022年に開業してから、入手困難とも言われるほど高い人気を誇る「セブンシダーズワイナリー」のワイン。そんなワイナリーが手がける宿の最大の特長は、目の前に広がるぶどう畑と、徒歩わずか30秒ほどの場所にある醸造施設。
栽培・醸造責任者の鷹野ひろ子さんは「醸造家ばかりが前にでるのではなく、それぞれの農家が作ったぶどうを表現するワインを造りたい」と考え、当ワイナリーの立ち上げに参画。この想いを体現するために、各ワインボトルのエチケットに、使用したぶどうの品種、栽培した農家、その割合を表記し、農家の個性を尊重したワイン造りを行っています。
「山梨県はぶどう農家がいるからこそ発展してきた土地。だからこそ、自分のぶどうがどこに入って、どんなワインになったのかが、農家さんにも分かるようなワインを造っていきたい」と鷹野さん。
地元の農家との深い信頼関係と、ワイン造りへの情熱、そして土地への愛が、風土を映し出すワインとなり、河口湖エリアでの新しいワイン文化を作り出しています。
そんな、個性豊かなワインを心ゆくまで堪能する宿として、醸造所、ぶどう畑の隣に作られたのがヴィラ棟。全7室で、黒を基調とした和モダンなデザインで統一されています。
ぶどう畑を眺めながらいただくディナーでは、山梨県産の牛や地鶏、川魚などを使ったコース仕立ての料理が供されます。コンセプトは「ワインを主役にした料理」。


ワイナリーでの体験と宿での滞在が一体化した、ワインツーリズムの最先端を行く宿。ワインを愛する人にとってはたまらない、至福のひとときが待っています。
撮影/本誌・大見謝星斗