知っておきたい女性のからだと健康 最終回(前編)ロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下ロコモ)という言葉はすっかりおなじみになりましたが、まだ自分には関係ないと思っているのでは? 筋肉や関節、骨などの運動器の機能の衰えは、30代でもその兆候があらわれることがあります。埼玉県立大学保健医療福祉学部 准教授の山田恵子先生にロコモに気づく方法や対策について伺います。
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ロコモティブシンドローム
[お話を伺った方]
埼玉県立大学保健医療福祉学部 准教授
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科/部
山田恵子先生
やまだ・けいこ 1999年東京大学医学部卒業後、同学部附属病院整形外科等を経て、2005年東京医科歯科大学大学院医療管理政策学修士、17年ハーバード大学公衆衛生大学院修士、18年東京大学医学部附属病院企画情報運営部勤務、22年から現職。博士(医学、東京大学)。日本専門医機構整形外科専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医/認定スポーツ医。
40代以上の4660万人がロコモに該当する
「階段の昇り降り」「急ぎ足で歩く」「休まず歩き続ける」「スポーツや踊り」が以前よりも難しくなったと感じていないでしょうか。
日本整形外科学会が2024年に実施したロコモに関するインターネット調査では、全国の20歳以上の男女1万200人を対象に、「
ロコモ度テスト」(次ページ)のうち「ロコモ25」を実施しました。その結果、年齢が上がるにつれて、前述4項目の困難度を自覚する率が顕著に上昇することが明らかになりました。
この調査に携わった山田恵子先生を含む研究チームは、整形外科に通院中の65歳以上の患者を対象にロコモ25の項目の出現順序を調べた以前の研究結果と照らし合わせ、この4項目がロコモになる兆候と考えました。これは、ロコモ度テストを検査項目に組み込む人間ドックの受診者中のロコモが悪化した人のデータからも裏づけられました。山田先生は「4項目のうち一つでも困難さを自覚したらロコモのサインです」と話します。
動作の困難さから見つけるロコモの兆候
以下の4つの項目のうち、一つでも困難さを自覚する場合、ロコモになるサインだと考えられる。この4項目は、日本整形外科学会 ロコモインターネット1万人調査(2024年)の結果から浮かび上がった。
●階段の昇り降り
●急ぎ足で歩く
●休まず歩き続ける
●スポーツや踊り 「ロコモティブシンドローム」は07年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」を指し、進行すると要介護リスクが高まるとされます。
「昔から加齢で足腰が衰えることは知られていますが、学問と捉えて対策を立てることが重要と考えられ始めたのはごく最近です。平均寿命が延び、高齢者の数が増えるにつれて、医療現場では同じ人が骨折を繰り返したり、運動器の病気を合併したりして移動が困難になる例が多く見られるようになりました。この状態を学術的な概念を作って分析し、体系的に判断法や予防から治療までを一元的に構築しようという考えから生まれたのがロコモです」
日本整形外科学会7つのロコチェック
以下の7項目のうち、1項目でも当てはまると、骨や関節、筋肉などが衰えており、ロコモの心配がある。
●片脚立ちで靴下がはけない
●家の中でつまずいたり、すべったりする
●階段を上がるのに手すりが必要である
●家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
●2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2本程度)
●15分くらい続けて歩くことができない
●横断歩道を青信号で渡りきれない 以降、研究や対策が少しずつ進んできましたが、高齢化率の上昇でロコモ該当者の数が大きく減ることはありません。22年の報告では40代以上のロコモ該当者は4660万人とされ、高血圧や糖尿病の患者数を上回ります。
(後半へ続く。)
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