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東寺執事長の三浦文良さんに学ぶ、曼荼羅の教えとは【特集・京都の“別格”】

2025.10.30

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〔特集〕誌上でゆっくり学ぶ・愛でる 京都の“別格” 京都では合わせて17の寺社が世界遺産に登録されていますが、平安遷都にあたり大きな意味を持った構成資産が2か所あります。桓武天皇が遷都の成功を祈願した京都最古の下鴨神社と新しい都を守るために作られ、平安京造営の起点となった東寺です。千年の都では、世界遺産以外にも名所・名刹は数しれず ── 深淵なる京都の別格を訪ね、日本の真髄(こころ)を学びます。前回の記事はこちら>>

特集「京都の別格」の記事一覧はこちら>>>

東寺執事長 三浦文良さんに学ぶ 曼荼羅の教えとはいったい何か

曼荼羅とは、言葉では伝えられないものを伝えようとして描かれたものです。密教の経典に表されている教義は極めて神秘的で、衆人に理解させるため、図像による表現を借りなければ伝わらないと考えられたのです。よく見ると、たくさんの仏が集合し、規則的に配置されているのがわかります。

異なった色が入り混じった様子を「まだら模様」といいますが、一説には、その語源は曼荼羅だといわれています。これは、視覚的にはバラバラであっても、根源的には一体であるという調和の世界を表しています。曼荼羅からは、すべての仏が大日如来の化身であることが見て取れます。

大日如来は、あらゆるものを生み出すエネルギー

講堂の立体曼荼羅の須弥壇を北側から見たところ。手前が、中心に座す大日如来の後ろ姿。通常は非公開だが、秋の特別公開で拝観可能(詳細はこちらの記事でご紹介)。

密教の本尊である大日如来とは、わかりやすくいえば “命あるものの根源” という意味です。あらゆるものを生み出す生命のエネルギーだととらえられます。つまり、仏のみならず、命あるものすべてが、大日如来の変身した姿だということです。


私たちは、顔も名前も性格も異なりますが、命あるものとして根源的に繫がっている一つの世界に生かされているといえるでしょう。すべてを均質化して同じものになるということではなく、互いの違いを認め、個々の存在を尊重し合いながらも、一つの世界として調和する、ということを意味します。

これは、人間関係や国交などに当てはめて考えることができます。曼荼羅は、現代を生きる私たちにとっても、大切なことを教えてくれています。

〔国宝〕金剛界曼荼羅

画像提供/奈良国立博物館

〔国宝〕胎蔵界曼荼羅

画像提供/奈良国立博物館

東寺は、約50幅の曼荼羅図を所蔵する「曼荼羅の寺」。なかでも至宝は、「金剛界曼荼羅」と「胎蔵界曼荼羅」で一対となる「両界曼荼羅図」。ともに密教の根本経典である『金剛頂経』に基づいて描かれたのが「金剛界曼荼羅」、『大日経』に基づいて描かれたのが「胎蔵界曼荼羅」だ。

「金剛界曼荼羅」は、密教の智慧と実践を表すとされ、描かれている仏は全部で1461体。「胎蔵界曼荼羅」は、密教の理、つまり真実を描いているとされ、中心に描かれた大日如来の導きにより、すべてのものが大日如来と一体化できることが414体の仏によって表現されている。

「両界曼荼羅図(伝真言院曼荼羅)」は日本に現存する最古の彩色曼荼羅で、国宝に指定され、通常は非公開。制作時期は平安時代の9世紀で、1200年近く経過しているにもかかわらず、鮮やかな色彩を保っている。

(次回に続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

撮影/浅井佳代子 取材・文/安藤菜穂子

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