2026年は、アメリカ建国250周年! “はじまりの地”をめぐる東海岸旅〔第1回〕 2026年は、アメリカ合衆国が建国された1776年から250周年にあたる年。そんな節目に訪れたいのが、独立宣言が採択され「アメリカ合衆国」が生まれた街・フィラデルフィアと、北アメリカで最初にイギリスの植民地となったバージニアです。記念の年に、歴史の原点へ―。“はじまりの地"をめぐる東海岸旅を3回に分けてお届けします。第1回は、フィラデルフィアへ。建国の鼓動が響く、見どころたっぷりの歴史スポットをご案内いたします。
2026年が熱い、フィラデルフィアってどんな街?

フィラデルフィアは、日本からの直行便はないものの、ワシントンD.C.から約1時間のフライトで着くことができる、比較的アクセスのよい街です。街には近代的なビル群が立ち並び、経済や芸術の面でも活気あふれる一方、赤レンガの建物や石畳の路地が当時の面影を色濃く残しており、過去と現在が心地よく混ざり合う独特の風景が魅力です。
今から約250年前のこの街で、トーマス・ジェファーソンが起草した「アメリカ独立宣言」が採択され、アメリカ合衆国という国が生まれました。さらに2026年のフィラデルフィアは、建国250周年だけでなく、映画『ロッキー』公開50周年、FIFAワールドカップの開催地としても注目の年。パレードや記念イベントも続々と予定されており、今こそ訪れるべき“記念イヤー"の主役都市なのです。
ランドマーク「リバティ・ベル」が今も伝える、自由への祈り

実物の鐘。「リバティ・ベル・センター」に展示されており、誰でも無料で鐘と一緒に写真を撮ることができる。
お土産屋さんなど、街のあちこちで目につくのが、亀裂が入っている鐘のモチーフ。この鐘は「リバティ・ベル」と呼ばれ、アメリカ合衆国の建国の歴史と深く結びついており、フィラデルフィアを象徴するランドマークとして親しまれています。鐘の胴に刻まれた「全地に自由を告げよ」という一節は、自由を求め続けてきた人々がこの鐘に込めた想いを、今日まで伝えています。
この鐘にまつわる、特にロマンチックな伝説があります。それは、この鐘の音が、採択されたばかりの独立宣言を読み上げるために人々を招集したというもの。まさに“はじまりの音"を奏でた鐘だと言うことができます。さらにこの鐘は、アレクサンダー・ハミルトンなど偉人の死や様々な記念日、数々の戦いや重要な会議の始まりを告げ、自由の象徴として歴史の節目に立ち会ってきました。
どんな音なのか知りたい方も多いかと思いますが、実はもうこの鐘を使うことはできません。大きな亀裂が胴を切り裂いており、修復が不可能だからです。この亀裂は初めて鳴らされた際に入ったという話も語り継がれていますが、実際には長年の使用を経て広がったと考えられています。しかしながら、今もなお鐘の沈黙の中に、自由のために尽力した人々の情熱が息づいているようです。
実物のリバティ・ベルが展示されている独立記念公園では、ほかにも独立宣言と合衆国憲法が討議され採択された建物・独立記念館や、ジョージ・ワシントンが初代大統領に就任したコングレス・ホール、大統領の家史跡などをすべて無料で見学することができます。
アメリカ合衆国最古の住宅街。エルフレス・アリーを歩く

小さな路地は全長わずか約40メートル。家々には、当時の職人が手作業で積んだレンガの風合いが今も残る。
歴史に名を残す偉人たちの功績に触れられるスポットが多くありますが、歴史をつくったのは彼らだけではありません。この地で暮らしを営んできた人々の存在もまた、アメリカ建国に欠かせません。エルフレス・アリーは、アメリカ合衆国で現存する最古の住宅街として知られ、歴史地区に指定されています。この小路を歩けば、まるでタイムスリップしたような感覚に包まれながら、アメリカ初期の人々の暮らしに思いを馳せることができます。
驚くべきは、今も人々が住んでいるということ!(一部は博物館施設として公開されています)。2025年5月に訪れた際には、「住人を募集しています」という看板が掲げられている家も見かけ、ここが単なる史跡ではなく今も生活の場であることを改めて感じました。
石造りの地下室への扉。
1703年頃に誕生したこの住宅街には、商人や職人など、街の活気を支える中産階級の人々が住んでいました。石畳の細い路地に建ち並ぶ赤レンガの家々。その中でも目に留まるのは、地面から覗く、地下室への小さなドア。これらの地下室は、かつて食品の貯蔵などに用いられたものだそうで、人々の知恵がそっと息づいています。また、それぞれの家の前には鉄製のフックが設置されており、これはかつて火事の危険と隣合わせだった時代に、消火用のバケツや装備を掛けるために使われた名残です。
エルフレス・アリーを歩けば、この地で暮らした人々の営みの上にアメリカの歴史が築かれたものであることを、しみじみと実感することでしょう。
映画「ロッキー」で、主人公が駆け上がったフィラデルフィア美術館の階段「ロッキーステップ」は、多くの人々が訪れる象徴的な場所。
歴史深いこの街を守るため、観光資材としてアート事業にも投資してきたフィラデルフィアは、アートシーンも見逃せません。「考える人」で知られるロダン美術館、映画『ロッキー』でおなじみの「ロッキーステップ」があるフィラデルフィア美術館、そしてとりわけ必見なのが「バーンズ・コレクション」。大富豪のアルバート・C・バーンズが集めたルノアール、セザンヌ、ピカソ、ゴッホ、モネなどの名画が公開されています。展示の方法が一風変わっており、ほかの美術館とはまったく違う体験をすることができます。
「アメリカ合衆国」の“はじまりの地"であるフィラデルフィアは、過去と今、歴史と芸術が絶妙に重なり合う場所。ときめきと学びに満ちたこの街を、あなたも歩いてみませんか?
・次回は、人々のルーツに触れる、フィラデルフィアのおすすめ美食をご紹介します。