〔特集〕今話題のコペンハーゲンのデザインの祭典 3daysofdesign 2025を訪ねる デンマーク・コペンハーゲンの町全体が会場となって3日間開催される「3daysofdesign」(通称「3dod」)は今、ミラノデザインウィークに次いで世界的に注目を集めているデザインの祭典です。2013年に始まって以来、年々規模が大きくなり、2025年は6月18日~20日の3日間で、400以上ものブランドが参加。約6万人もの来場者数を記録しました。このたび家庭画報編集部は初めて3dodを現地取材。そこで体感した盛況の様子とともに、デンマークブランドの最新作をお見せします。
150年以上、北欧デザインの最前線を走り続ける
FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)
1872年創業の老舗家具ブランド「フリッツ・ハンセン」は「Shaping Lasting Design(永続的なデザインを形作る)」をテーマに、市内旗艦店とレストランの2か所で展示イベントを開催しました。
ショールーム以外を会場にしたイベントを探して歩くのも3dodの楽しみ。「フリッツ・ハンセン」は、デンマーク最古の庭園「ローゼンボー城庭園」にあるレストラン「Orangeriet」でイベントを開催。「アウトドアコレクション」が並ぶガーデンテラスは、市民や観光客の憩いの場に。
店内にはアルネ・ヤコブセンがデザインした「グランプリチェア」などがしつらえられた。
旗艦店では新作のほか、エッグチェアやセブンチェアなどの製作の様子も展示。
旗艦店アウトドアスペースは、デザイナーや職人、来場者が集まり、気さくに話をする場に。一般のお客さんも自由に交流できる。
ブランドの遺産から誕生。気鋭デザイナーの新作
メイン会場となった旗艦店で最も注目を集めたのが、今をときめくデザイナー、マイケル・アナスタシアデスによる新作「AFTER(アフター)」。 フリッツ・ハンセンとの初めての協業について、マイケルに話を聞きました。
本社で世界各国から集まったメディア向けに「AFTER」について話をするマイケル。
「デンマークの名作家具は、過去にデザインされた家具を現代的に解釈し直して、さらに別のデザイナーが改良する、という流れの中で生まれています。この哲学に則って、多くのデザイナーが再解釈を試みてきた古代ギリシャの『クリスモスチェア』を出発点に、過去の作品や資料を何度も参照し、話し合いを重ねて、この『AFTER』チェアができました。名前のとおりですね。一見シンプルな構造ですが、これは高度な木工技術がなければ実現できませんでした。接合部や背もたれ、座面などの細部に職人技が凝縮されています」
AFTER
Michael Anastassiades(マイケル・アナスタシアデス) 「デザイン面にも技術面にも伝統と新味が共存する一脚」
マイケルが「視覚的・感覚的に快適な椅子を目指しました」と話すとおり、造形は洗練されて美しく、座ってみると背もたれから肘かけ、座面まで自然に体にフィットする。アッシュ材のオイル仕上げと、バーガンディの塗装の2色展開。ダイニングテーブルも同シリーズ。/フリッツ・ハンセン 東京
2024年からフリッツ・ハンセンのクリエイティブディレクターを務めるエルス・ヴァン・ホーレベークは、「ブランドが未来へ向かうためには、まず過去を理解することが重要だと考えているので、このコラボレーションは必然でした」と話します。
マイケルとの今後の展開について聞いてみると、「まだいえませんが、絶対に皆さんが想像できないようなことになると思いますよ!」。期待が膨らみます。
SOLAE
Cecilie Manz(セシリエ・マンツ)

木漏れ日のようなポータブルランプ日本でも人気のデンマーク人デザイナー、セシリエ・マンツはポータブルランプ「SOLAE(ソラエ)」を発表。楕円形のシェードから、光が漏れ出すように柔らかく照らす。3段階の調光機能もあり、デスクでもベッドサイドでも重宝する。「静かな時間に寄り添うランプです。日常の中でも気軽に使えて、食卓やデスクにそっと置いておけると思います」とセシリエ。
PK3
Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)

巨匠の初期作品、幻の一脚が製品化デンマークの巨匠、ポール・ケアホルムが1954年にデザインした「PK3」が初めて製品化・発表された。成形合板にスチールを組み合わせたケアホルムらしい一脚で、スタッキングも可能。息子のトーマス・ケアホルムは、「当時父がデンマークのある会社の社員食堂のためにデザインしましたが、不採用になっていました。眠っていたデザインがこうして形になったことは感慨深いです」と話す。
香川県・本島での特別展示イベント
「FRITZ HANSEN EXHIBITION in HONJIMA 2025」が今秋開催

瀬戸内海に浮かぶ本島での特別展示イベントが、2019年、22年に続いてこの秋開催されます。2025年から新会場が加わり、笠島地区の古民家2軒で、日本の伝統建築と北欧家具の美しいコラボレーションを見ることができます。家庭画報2025年4月号でご紹介した、香川漆芸と共作したセブンチェア「瀬戸の海」や、新作も展示予定です。
日時:2025年10月3日(金)~11月9日(日)10時~16時30分(木曜休館)
会場:香川県丸亀市本島町笠島253
「フリッツ・ハンセン庵」「Kasashima to.」
(次回に続く。)