ジュエリー

今ではほとんど見られないエナメルの芸術技法を駆使した「ティファニー」の逸品

2025.11.04

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ジュエリー見聞録 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。前回の記事を読む>> 連載一覧へ>>

手のかかるパイヨン エナメルの技術が素晴らしい

解説/山口 遼(宝飾史研究家)

ジュエリーのデザインの中でも、鳥の羽根というのはよく使われるものの、このネックレス、鳥の本体は姿を見せず、羽根だけが金とプラチナを使って、重なり合ってデリケートなラインを描いています。

1956年代に同社のチーフデザイナーであったジャン・シュランバージェのデザインを受け継いだ新作で、作りとしては大柄なものですが、全体の感じは柔らかで、女性的なものに仕上がっています。羽根の間に挟まれたルベライトが8石、ルビーとはまた違った色合いが良いアクセントになっています。


このネックレスで最も注目すべきところは、羽根の上のところどころに、小さく見える青い点のような粒です。ほぼ全周に並んでおり、ともすれば広がりがちな羽根のデザインをぐっと締めています。これはジュエリー見聞録でも初登場の技術で、パイヨン エナメルと呼ばれるものです。まず金属の枠の中に、台座となる色合いのエナメルを、焼き付けます。このジュエリーの場合は濃いブルーですね。その次に薄い金の板、いやほとんど金箔に近いものを、好きな形に切り取って、エナメルの上にのせて再度焼き付けます。最後に、金のパターンを楽しむなら無色の、金箔を挟んでのエナメルの色合いを楽しむなら、色のあるエナメルを再度かけて焼き付けます。なんとも手のかかる技術で、昔は懐中時計などの表面飾りに使われたらしいのですが、今では時計製作の本場のスイスでも、行う人はほとんどいない。まあ、それに断固挑戦したのがティファニー、自社の歴史にプライドをかけた見事なジュエリーですよね。

芸術技術を駆使した「ティファニー」の逸品

個性的で美しいデザインに8石のルベライトとエナメルが輝く

19世紀、エナメルを精巧に重ねて何度も焼成するという複雑で手間のかかる芸術的技法が細部に用いられたネックレス。職人による1700時間を超える卓越した手作業により完成。「ダブルウィングネックレス」(YG×Pt×ルベライト×ダークブルーエナメル×ダイヤモンド)1億7897万円/ティファニー

●お問い合わせ/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
TEL:0120-488-712

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年11月号

家庭画報 2025年11月号

撮影/栗本 光

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