名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
連載一覧はこちら>>
難読名字:道祖土(さいど)
埼玉県に多い難読名字です。漢字と読み方がほぼ対応しておらず、知らない限りは読むことができません。この名字は道祖神に由来しています。
道祖神とは、村外からやってくる疫病や悪霊の襲来を防ぐ神で、「道の神」「旅の神」などともいわれました。
村人や旅人の安全を守る道祖神
その信仰は地域によって違いがありますが、ご神体は石であることが多く、村の境目や峠、辻などに置かれています。こうした自然石や、石に文字や像を刻んだものを置く風習は全国各地に広く見られました。
現在は「どうそじん」と音読みするのですが、本来は「さえのかみ」「さいのかみ」といったのです。
さて、1月14日か15日に門松や注連(しめ)飾り、書き初めで書いた物などを持ち寄って焼く「どんど焼き」(左義長とも)という行事があります。これは平安時代に行われた宮中行事が起源とされています。
しかし、地方では道祖神の祭りとして行われることが多く、「さいとやき」と呼んで「道祖土焼」という漢字をあてることがあったのです。ここから、「道祖土」の部分を「さいと」「さいど」と読むようになり、「道祖土(さいど)」という地名や難読名字が生まれたようです。
従って、「道祖土焼」が広く行われていた時代には、「道祖土」はあまり難読ではなかったのかもしれません。
埼玉県さいたま市緑区の町丁である道祖土
さいたま市緑区には「道祖土(さいど)」という地名が残っています。名字としては、現在は埼玉県比企郡川島町周辺に多くなっています。
なお、地名ではは栃木県真岡市道祖土のように、「さやど」に変化したところもあります。こうした道祖神に因む名字は他にもあります。
青森県にある「妻神」「才神」と書いて「さいかみ」「さいがみ」と読む名字も、「道祖神(さいのかみ)」に由来しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)
セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細は
こちらから>>