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堀川理万子さん「一番身近な戦争体験者に話を聞くことから。残された時間は少ない」【戦後80年インタビュー特集】

2025.09.22

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〔特集〕戦後80年インタビュー特集 戦争を知らない私たちはどう戦争を語り継いでいけばいいのだろう “戦争の記憶の風化”ということがいわれるようになって久しい。戦争を経験した世代が日本の人口の1割を切り、両親や祖父母から戦争の話を聞くという体験をした世代すら減少する一方だ。

戦後80年という節目の今、世界でさまざまな平和式典が開かれる傍らで、ウクライナ戦争、パレスチナ・イスラエル戦争など、過去の過ちに対する反省や学びなどまるでなかったかのように戦争を起こす人たちがいる。どの国の戦争であれ、いつの時代の戦争であれ、戦争を始めようとするのは少数の人間で、被害が及ぶのは平和に暮らしたい普通の人々だという事実。

そして多くの場合、本を正せば、戦争を起こす人たちにその権限を与えたのはその犠牲となる人々であるという矛盾。戦争は始まったその日から、ありふれた日常も、思い描いていたささやかな未来も、すべて奪い取っていく。


私たちの両親や祖父母の心にそうした戦争への嫌悪が深く刻まれていることが、今過去のこととして忘れ去られようとしている。戦後世代の私たちがこの先どう次世代に戦争を語り継いでいくか、その責任が問われている。

カズオ・イシグロさん「80年の平和を普通のことと思ってはいけない。常に世界の動向を見つめて」>>

坂本美雨さん「戦争下にいる遠くの誰かとSNSで繫がった時、それは“自分事”になる」>>>


【戦後80年の間に起きた国々を巻き込んだ戦争】
※人数は民間人の死者数。ただし調査機関によって数字に隔たりがある
・朝鮮戦争1950〜1953年200万人以上(Bruce Cumings "The Korean War : A History")
・ベトナム戦争1955〜1975年200万人以上(The Vietnamese government)
・ユーゴスラビア紛争1991〜2001年7万人以上(Humanitarian Law Center)
・アフガニスタン紛争2001〜2021年7万人以上(The Watson Institute for International andPublic Affairs)
・イラク戦争2003〜2011年約50万人(PLOS Medicine)
・シリア内戦2011〜2024年16万4000人以上(シリア人権監視団)
・ウクライナ戦争2022年〜1万3000人以上(国連人権高等弁務官事務所)
・パレスチナ・イスラエル戦争2023年〜5万人以上(パレスチナ・ガザ保健省。ただし戦闘員を含む)


戦争体験者を訪ね歩き絵本を作った

堀川理万子さん(画家・絵本作家)
一番身近な戦争体験者に話を聞くことから。残された時間は少ない



堀川理万子(ほりかわ りまこ)
1965年東京都生まれ。画家・絵本作家。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。平面から立体作品、絵本まで幅広く活動。メダカの水槽が並ぶ都内のアトリエで制作。絵本の代表作に『海のアトリエ』(Bunkamura ドゥマゴ文学賞、講談社絵本賞、小学館児童出版文化賞)、『ひみつだけど、話します』(坪田譲治文学賞)など。『いま、日本は戦争をしている』は最新作。


『いま、日本は戦争をしている─太平洋戦争のときの子どもたち─』 絵と文/堀川理万子(小峰書店) 絵本としては大部の128ページ。小学校低学年から大人まで対象。

『いま、日本は戦争をしている─太平洋戦争のときの子どもたち─』 絵と文/堀川理万子(小峰書店) 絵本としては大部の128ページ。小学校低学年から大人まで対象。

戦時中まだ子どもだった戦争体験者が感じたことを当時の子どもの言葉で

北海道から沖縄まで戦争体験者を訪ね、戦時中の体験を聞き書き、聞き描きした『いま、日本は戦争をしている』という絵本を作った人がいる。今注目の絵本作家、堀川理万子さん。

話は公募展「絵と言葉のチカラ展」に応募するために、太平洋戦争をテーマにした絵を描こうと思いついたところから始まる。堀川さんがとった手法は、戦争体験者である父に話を聞き、父の記憶の中の光景を絵にし、当時の子どもの言葉で綴るというものだった。

「まだ子どもだった父が、戦争中、大人に米を取られたとか、入院しているときに開戦のニュースをラジオで聞いたとか話していたのを思い出し、それを絵と文章にしてみようと思ったんです」

作品は公募展で最高賞を受賞。それをきっかけに、さらに多くの人を取材する絵本の話が進んだ。知り合いのつてで協力してくれる戦争体験者を探した。すでに戦争体験を作品にしている人や、いわゆる語り部の人は除き、「このまま誰にも話さないつもりだったというような方から話が聞けたら」という人を探し出し、広島、長崎、沖縄まで足を運ぶ。当時の満州や樺太から引き揚げてきた人たちも含め、計17人。

絵本より。「東京大空襲」。防空壕から出たら自分の家が焼けていた。

絵本より。「東京大空襲」。防空壕から出たら自分の家が焼けていた。

「最初に話したくないことは話さなくていいし、書いてほしくないことはいってくださいとお伝えしました。喪失感を伴う話は、自分の日常と身近な人の死がすごく近いから話すご本人にとってはきついことなんです。私たちは幸いなことにほとんどそういう体験をせずにこられましたが、死体のにおいが当たり前のようにあって過ごしてきた人たちの体験はあまりに重い」絵本より。「あおの出征」。戦争のために供出されていく大切な馬を飾り立てて別れを惜しむ。

絵本より。「あおの出征」。戦争のために供出されていく大切な馬を飾り立てて別れを惜しむ。


聞いた話を一枚の絵にし、文章をつけていくのは根気を要する作業だ。

「例えば、戦争中、先輩と一緒に馬を引いて田畑を掘り返す作業がひたすら続いたというお話を聞くと、奥に山並みが広がる風景の中で少年二人が馬を操って田を耕す素敵な絵が思い浮かんで、きれいだし、描きたいなと思ってシーンはすぐ決まるんです。

それで、その少年二人が引いた農具などを資料やインターネットでひたすら調べて、この季節に行う作業は何かとか、その季節であれば周りの草は何が生えていたかなどを確認して絵にしていきます。そのラフの絵を見ていただいて、手直しをしてまた見ていただく。その繰り返しです。

ラフ画(上)と完成した原画。記憶の風景の構図を決めるために何度も見てもらい完成に近づけていく。

ラフ画(上)と完成した原画。記憶の風景の構図を決めるために何度も見てもらい完成に近づけていく。

自分自身もそうなのですが、記憶って結構バグがあるんです。だから昨日はこういったけど今日はこうと、おっしゃることが正反対だったりすることもあります。でも、何回もずっと絵を見ているうちに、当時の記憶が甦って鮮明になってくるんですよね」

完成した絵本は総ページ数128ページ。ずっしりと重く、本から放たれる堀川さんの熱量に圧倒される。

取材・構成・文/三宅 暁 撮影/本誌・大見謝星斗

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