〔特集〕~伝え継ぎたい手仕事~世界が憧れる「日本の美」 日本独特の美意識や感性、国民の手の器用さに支えられた世界でもトップクラスの匠の技は、私たち日本人が考える以上に海外の人たちを魅了する力を持っています。日本の手仕事を、今一度再評価し、次世代に継承すると同時に、今の暮らしに息づく道具として世界に発信していきたいと思います。
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「日本の美」を伝える人々
【唐紙】400年の板木をモダンにアートディレクション
──千田長右衛門さん(13代唐長・唐紙師)
寛永元年(1624年)の創業から約400年、600枚以上の板木(はんぎ)を守り継いできた「唐長」。
寛政6年(1794年)の裏書が残る「丸龍(がんりゅう)」の板木。

板木は襖1枚の約1/12の寸法が多数を占め、大作は繰り返し写し出して表現。
木版手摺によって和紙に文様を写し取る唐紙は日本独特の装飾紙であり、襖や屛風、壁紙などの室内装飾に用いられてきました。
実りと豊穣を象徴する「天平大雲」の襖。
その伝統を、2024年、初代の名跡を継いだ唐紙師・千田長右衛門さんが妻・愛子さんとともに13代を継承。
深遠なブルーで独自のアートも展開する千田長右衛門さん。2025年10月開業予定のホテル「エスパシオ ナゴヤキャッスル」のエントランスアートとして20メートルに及ぶ作品披露がある。
「板木や文様の美しさをバックボーンに、唐紙独特の陰影の揺らぎや余白、気配や面影、不揃いの美などによる日本の美意識をもって世界に貢献していきたい」と語ります。
400年続く唐紙を進化させ、しつらえたサロン内の和室。ガラスの床の間は「角つなぎ」、違い棚は吉祥文様の「若松」。天井には天保年間に京都御所にも用いられた「梅の丸」。
過去に今の空気を重ね、未来を切り拓くことを真の伝承と捉える当代の取り組みは、異素材への文様展開や異業種とのコラボレーション、今を生きる者の祈りや願いを文様に込めた新作板木「平成令和の百文様」など、従来の唐紙に存在しなかった革新的でモダンなものです。
川島織物セルコン製のテキスタイルを張ったフィン・ユールの椅子やラグ、カーテン、アートピースを展示。サイズに応じてフルオーダーできる。

生命を繫ぐ祈りが込められた「角つなぎ」文様のトレーはクリストフル、吉祥文様の「南蛮七宝」のティーカップはノリタケとの共同作品。
唐紙に潜む美や唯一の価値を求めて訪れる世界の一流たちに向け、非公開のオーダーサロンを京都・嵯峨に設け、未知の世界の扉を開いています。
唐長 京都嵯峨(住所非公開、完全予約制)https://kirakaracho.jp/ 連絡はinfo@kirakaracho.jp
(次回へ続く。
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