〔特集〕~伝え継ぎたい手仕事~世界が憧れる「日本の美」 日本独特の美意識や感性、国民の手の器用さに支えられた世界でもトップクラスの匠の技は、私たち日本人が考える以上に海外の人たちを魅了する力を持っています。日本の手仕事を、今一度再評価し、次世代に継承すると同時に、今の暮らしに息づく道具として世界に発信していきたいと思います。
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「日本の美」を伝える人々
【西陣織】織り幅の革新で世界に挑む
──細尾真孝さん(細尾12代目)
1688年創業の西陣織の織屋「細尾」。1200年間、日本だけで織られ、世界にはほとんど知られていなかった特権階級の織物を、世界に知らしめた立役者が、細尾12代目・細尾真孝さんです。
西陣織の革命児、細尾真孝さん。箔を使い、和紙や本金銀を織り込む立体的な構造など、西陣織の特性を失うことなく、帯幅32センチからテキスタイル幅150センチの織機を開発したことが世界進出への分岐点に。
「私が家業に入った当時、西陣織の市場規模は30年間で10分の1にまで縮小し、危機状態にありました。転機は、2008年パリの装飾美術館で行われた『日本の感性』展の後、世界的な建築家ピーター・マリノ氏から世界標準幅の150センチで生地を作れないかとオファーがあったこと。帯幅の32センチからテキスタイル幅150センチへ、1年かけて織機を開発したことが世界進出のターニングポイントとなりました」
2010年に開発した織機は、現在では14台に増え、2023年には、グローバル化の拠点として、ミラノのブレラ地区にショールームを展開。
ミラノデザインウィークで展示された家具。ディモーレスタジオのディレクションによりアンティークの椅子に張り込まれた。
2025年春、行われたミラノデザインウィークでは、ミラノを拠点とする建築家デュオ、ディモーレスタジオとの協働による新作「ヘミスフィアコレクション」(
こちらのページにて紹介>>)を発表し、大きな反響を呼びました。
新作「ヘミスフィアコレクション」を生かした額装。
「細尾には2万点に及ぶ帯図案のアーカイブが残されていますが、ディモーレスタジオは、その未着彩の素描図案を、欧州ならではのクラシカルな感性で捉え直し、配色を含め再解釈を加えてくれた。日本人がやると近すぎて帯になってしまうものが、異なる感性でやると欧米の価値観に合うものになる。遺産を再構築し、現代の洗練性を持たせながら、新しさを出すことができたと思う」
HOSOO FLAGSHIP STORE 2階のHOSOO GALLERYで、2025年8月10日まで行われた『TheHemispheres』展で展示された、新作33点の貼交屛風(はりまぜびょうぶ)。同展示で新作が日本で初めてお披露目された。 *テキスタイルはHOSOO TOKYOでもご覧になれます。
貴族階級や豪商を顧客とし、贅を尽くして、ひたすら「究極の美」を追求してきた西陣織。目の肥えた世界の富裕層を魅了する究極の織テキスタイル物として、世界に広まっています。
右・HOSOO FLAGSHIP STOREでは小物も充実。六角形のスタイリング・マット 各1万4300円。左・KIMO NO BAG33万円。
HOSOO GALLERY
住所:京都市中京区柿本町412
電話:075(221)8888
https://www.hosoogallery.jp/
(次回へ続く。
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