〔特集〕~伝え継ぎたい手仕事~世界が憧れる「日本の美」 日本独特の美意識や感性、国民の手の器用さに支えられた世界でもトップクラスの匠の技は、私たち日本人が考える以上に海外の人たちを魅了する力を持っています。日本の手仕事を、今一度再評価し、次世代に継承すると同時に、今の暮らしに息づく道具として世界に発信していきたいと思います。
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日本の美と感性──
匠の技で世界へ

西陣織、世界(ミラノ)へ──
世界の名立たるラグジュアリーブランドの店舗の内装でその生地が使用されていることで知られる京都の西陣織の老舗「細尾」が、2025年4月のミラノデザインウィークで発表した新作の展示会場。建築家デュオ、ディモーレスタジオとの協働で作られたテキスタイルがソファなどに張り込まれ、日本の素材、技術、伝統柄を生かしつつ、欧米でも通用する新しい洗練性を発信。ミラノ在住のアーティスト、オザンナ・ヴィスコンティのアトリエが会場となり、会期中は長蛇の列ができた。/Photo:Silvia Rivoltella
今、世界のラグジュアリーブランドがこぞって日本の手仕事に注目しています。「『手で物をつくる』ことこそ人間の創造性の原点」とし、工芸的な手仕事の復権を標榜する海外のラグジュアリーブランドの称賛の的となっているのです。
室町時代から受け継がれる木桶の技法と緻密な計算によって創られている「中川木工芸」のシャンパンクーラー。美しい2色の木肌と曲線がアート作品のような佇まい。
民藝運動の創始者、柳 宗悦は、日本を「手仕事の国」と呼び、国民の手の器用さに支えられた工芸のレベルの高さ、風土に根差した固有の独創性を称賛しました。
日本には今も多様で豊かな工芸文化が残りますが、残念ながら時代のニーズに適わず、埋もれてしまっているものも少なからずあります。
寛政3年(1791年)の裏書が残る「影日向九曜紋」の板木から手摺りで和紙に写し取る「唐長」の唐紙。
しかし、業界を牽引するトップランナーの登場や、ディレクションによる再解釈、ブランディングの工夫など、何かきっかけが摑めれば世界に通用する匠の技はたくさんあります。
ここで紹介するものは、志を持ち、革新によって新しい可能性を切り開いた、その好例です。
(次回へ続く。
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