疲れ、冷え、不眠…etc.「なんとなく不調」の改善法(1) 寝ても疲れが取れず、体が重だるい。慢性的な冷えやこりに悩まされている。年とともに寝つきが悪くなり、眠りも浅くなってきた……。そんな、病気ではないけれど元気でもない「なんとなく不調」を感じる人が増えています。現代人が陥りやすい、こうした不調の主な症状や原因について、医師の石原新菜先生に伺います。連載一覧はこちら>>
お話を伺った方石原新菜先生
いしはら・にいな 医師、イシハラクリニック副院長。幼少期をスイスで過ごし、帰国後は伊豆の緑豊かな環境に育つ。帝京大学医学部卒業後、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在は父、石原結實のクリニックで治療にあたる。漢方医学、自然療法、食事療法に詳しく、わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄から講演や各種メディアでも活躍中。
自律神経の乱れが「なんとなく不調」を引き起こす
体調不良を感じて病院で診察や検査を受けても、特に異常は見つからない。そんな“病気ではないけれど健康でもない”状態が「なんとなく不調」です。
症状としては、疲れやだるさ、肩こり、頭痛、冷え、むくみなどのほか、イライラや不安感といったメンタル不調までさまざま。診断名はつかないものの、自覚症状としては不快感や痛みがあるため、つらさをがまんしながら生活している人も少なくありません。
「なんとなく不調のことを、医学用語では『不定愁訴』といいます。原因がわからないけれど、患者さん自身がつらさや不快感を感じている状態のことです」と話すのは、東洋医学や女性特有の疾患にも詳しい医師の石原新菜先生。
「大きな要因として挙げられるのが、自律神経の乱れ。自律神経は呼吸や体温調節、内臓の働きといった、体の機能を調整する役目を担います。この自律神経がストレスや睡眠不足、天候や気圧の変化、加齢などによって乱れると、さまざまな不調につながるのです」
だんだんと病気に傾きつつある「未病」の状態
「自律神経を整えるために必要なのは、十分な睡眠、適度な運動、栄養バランスのとれた食事。当たり前すぎるようですが、やはりこの3つが大事です」と石原先生。

何かと忙しい現代人にとって、この“当たり前”を守ることはなかなか難しい面がありますが、石原先生は「ここから“本当の病気”に進行させないために大切」だといいます。
「なんとなく不調は、いわば病気の一歩手前の状態。東洋医学では『未病』といって、“まだ病気ではないものの、健康な状態からは離れつつある段階”と捉えます。この状態で今までと同じ生活を続けると、だんだんと病気になっていきます。自分は未病なのだと自覚して生活を見直し、健康の土台を底上げしていくこと。それによって、いま感じている不調も改善されていきます」
水の飲みすぎで不調が起こる「水毒(すいどく)」に注意
また、特に夏場は、水分のとりすぎがなんとなく不調の原因になるといいます。

石原先生いわく、「水はたくさん飲んだほうが健康や美容にいいと思われがちですが、水分のとりすぎは、東洋医学では『水毒』と呼ばれる症状を引き起こす原因になります」。
東洋医学では、人の生命活動に必要な要素を「気・血・水」の3つで表します。「気」は生命エネルギー、「血」は血液や栄養素、「水」は血液以外の体液を指します。
「水毒」とは、この「水」が体内に必要以上に溜まり、冷えやむくみなどにつながっている状態のこと。夏、普段より多く水を飲んでいながら、エアコンの効いた室内で座りっぱなしで汗をかかない、お風呂で湯船につからない……といった生活をしていると、体内に余分な水分が溜まります。これにより、冷えやむくみのほかにも頭痛や鼻水、めまい、耳鳴りといった症状が発生します。
「夏は湿度が高く、体から蒸発していく水分も少なくなりがち。『水毒』に特に注意が必要な時季です。水は、のどが渇いたときに少しずつ飲むようにしましょう。冷たい水は体を冷やして代謝を悪くするので、常温で飲むことも心がけてください」
*次回は、男性と比べて女性のほうがなんとなく不調を感じやすい理由について解説します。