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ゴッホの芸術を広く伝え、後世のために守り抜いた弟家族を知る【“ゴッホイヤー”を楽しむ】

2025.07.24

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〔特集〕2025〜2026年、3大展覧会開催 “ゴッホイヤー”を楽しむ─Vincent van Gogh─ ゴッホがこの世を去った1890年の135年後にあたる2025年から26年にかけて3つの大規模な展覧会が日本各地で開催されます。27歳で画家を志し、37歳で没するまでに約2000点の作品を描き、ひと目見て誰もが“ゴッホの絵だ”とわかる独自の画風に到達した人の家族、画業、生涯を、各展覧会の担当学芸員の方々のお話から紐解きます。

*掲載作品がどの展覧会で展示されるか、あるいは展示されないかは、作品名に続く数字でご確認いただけます。①=「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」 ②=「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」 ③=「ゴッホ・インパクト─生成する情熱」 ④日本での展示なし

特集「“ゴッホイヤー”を楽しむ」の記事一覧はこちら>>>

生活を支え、作品を守り抜いた
画家の夢をつないだ家族

《夜のカフェテラス(フォルム広場)》② 1888年9月16日頃、油彩/カンヴァス80.7×65.3センチ
アルル時代の代表作。西洋絵画ではグレーや黒で描かれていた夜空をブルーを基調にして表現した斬新な作品。2015年本誌撮影。


Courtesy of Kröller-Müller Museum,Otterlo, the Netherlands. Thisphotograph was taken in 2015. フィンセント・ファン・ゴッホは、1853年、オランダ南部の町ズンデルトで、牧師の父テオドルス(ドルス)と母アンナの長男として誕生。弟が2人、妹が3人います。
 
1880年、27歳で画家になると決意したフィンセントを支えたのが、次男のテオドルス(テオ)です。テオは以前にフィンセントも勤務したことのある、伯父が経営に参画していた画商「グーピル商会」のパリの支店で働き、フィンセントはテオを頼ってパリに移住、同居していた時期もあります。

「フィンセントは“孤高の人”というイメージを持たれることが多いかもしれませんが、実際には、家族とのつながりやほかの画家との交流のなかで生まれた画家だといえるでしょう」と語るのは、東京都美術館 学芸員の大橋菜都子さん。特にパリ時代には、兄弟でベルナールやロートレック、ゴーギャンなどの画家と親交を持ちました。

《花咲くアーモンドの木の枝》④ 1890年 油彩、カンヴァス
サン=レミ=ド=プロヴァンスの修道院病院で療養中、フィンセント・ウィレムの誕生祝いに、テオとヨーに贈った絵。
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

1888年、フィンセントはアルルに移住し、テオは1889年4月にヨハンナ(ヨー)と結婚。1890年7月にフィンセントがオーヴェール=シュル=オワーズで亡くなり、テオもその半年後の1891年1月に後を追うように亡くなりました。

前田寛治《ゴッホの墓》③ 1923(大正12)年 個人蔵
ヨーがテオの遺骨をオーヴェル=シュル=オワーズのフィンセントの墓の隣に改葬。前田は戦前に当地を訪ね、パリで描き上げた。

結婚生活がわずか2年足らずで終わってしまったヨーは、フィンセントとテオのコレクションをまとめ、一人息子とともにパリからオランダに帰国。フィンセントの作品を管理し、展覧会を企画し、彼がテオに宛てた膨大な数の手紙を整理して出版するなど、義兄の真価を後世に伝える仕事に邁進しました。

テオ・ファン・ゴッホ、ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲル『テオ・ファン・ゴッホとヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルの会計簿』①1889-1925年 テオとヨーが日々の出納を記したノート。テオの死後、ヨーがフィンセントの作品売却について細かく記した。
ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

「ヨーは婚約時代から尊敬していたフィンセントの芸術を広く伝える使命感を持っていました。特に手紙は、書かれた日付や、どの作品について書かれたものなのかを丹念に調べて突き止めるなど、後世の研究に大いに役立っています。その作業は、おそらくテオと精神的につながっていられる時間でもあったのではないでしょうか。同時に、労働者や女性の権利を守る社会活動を行うなど、世の中のために役立つことをしたいと考える女性でもありました」(大橋さん)

《モンマルトルの菜園》① 1887年油彩、カンヴァスアムステルダム市立美術館
1914年4月6日1万2000ギルダーで売却された記録が残る作品。アムステルダム市立美術館では、1905年にヨーの尽力によって個展が開催されている。
Collection Stedelijk Museum Amsterdam, gift of the Association for the Formation of a Public Collection of Contemporary Art in Amsterdam (VVHK), 1949


その後を引き継いだテオとヨーの息子、フィンセント・ウィレムは作品が散逸しないよう財団を設立し、美術館の開館に尽力しました。私たちが現在鑑賞することのできる”ゴッホの絵”は、家族が生涯を賭して実現させた、フィンセントの夢なのだといえるでしょう。
お話を伺った方々

大橋菜都子さん/東京都美術館 学芸員
専門はフランス近代美術。「ゴッホとゴーギャン展」等を担当。主な著書に『ルノワール作品集』がある。

塚原 晃さん/神戸市立博物館 学芸員
専門は南蛮美術など、西洋の影響を受けた日本美術全般。「メゾチントと洋風画」(『國華』1498)など論考多数。

工藤弘二さん/ポーラ美術館 学芸員
専門はフランス近代美術史。おもに印象派の画家たちをテーマとした展覧会を担当している。

(次回へ続く。この特集の一覧>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年08月号

家庭画報 2025年08月号

撮影/小野祐次 構成・文/安藤菜穂子 Special thanks to Ms. Yachiyo Matsuzaki(Yata)

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