名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:八月一日(ほづみ)
以前紹介した「
四月一日」と同じく、月日だけでできた名字です。
ネット上にはこうした月日名字がたくさん紹介されていますが、実際には「四月一日」と「八月一日」の2つしか実在しません。
さて、名字が誕生した頃は今と違って旧暦ですから、8月1日は現在の9月上旬頃となります。
この頃は米の収穫時期であると同時に、台風が日本列島を襲う季節でもあります。
大雨による増水で堤防が決壊し、農作物に被害が出ることも珍しくありません。
そこで旧暦の8月1日には稲の穂を摘んで神様に供え、台風の被害にあわず米が豊作となることを祈願する、という行事がありました。
この「穂をつむ」ということから、「八月一日」と書いて「ほづみ」と読む名字が生まれたのです。
「八月一日」さんはこうした神事に関わった人が名乗ったものなのでしょう。
現在は各地に点々とあり、とくに関東から東北南部にかけて集中しています。
なお「ついたち」のことは「朔日」とも書いたことから、現在は「八月朔日」と書くことが多くなっています。
さらに、茨城県のつくば地方では読み方が「ほぞみ」と変化していることもあります。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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