その価値は、歴史と技術にあり──美しき、物語のある腕時計 腕時計とは、時を知るためのツール。正確な時間が知りたいだけなら、時計選びに、それほど迷うことはありません。私たちが、腕時計にそれ以上の“何か”を求めるのは何百年という歴史を誇る老舗メゾンの圧倒的なストーリーに、ロマンを感じるから。時代を超越した普遍の価値、それこそが、真の美しい時計と言えるかもしれません。
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BLANCPAIN(ブランパン)
─SINCE 1735─
現存する世界最古の時計メゾンとして知られるブランパンは、機械式時計にこだわり、クォーツ時計はいっさい作らないことで有名です。本格的なムーブメントを搭載したレディスコレクションを、世界に先駆けて発表しました。
上品なオパリンダイアルには、クラシカルなローマ数字とダイヤモンドのインデックスをバランスよくセット。ムーンフェイズのほかに、先端の赤い針がポインター式でデイト表示します。「ヴィルレ デイト ムーンフェイズ」(18Kレッドゴールド×ダイヤモンド、アリゲーターストラップ、ケース径33.2ミリ、自動巻き)383万9000円(ブランパン ブティック 銀座 電話 03-6254-7233 URL:https://www.blancpain.com/)
世界最古の時計メゾン
腕時計に備わる機能といえば、カレンダー機能や防水機能など、実用のためのものがほとんど。そんな中、唯一ほほえましくなる機能が、ムーンフェイズです。もちろん月齢表示は実用のために生まれた機構ですが、夜空に浮かぶ「お月様」がそうであるように、慌ただしい時間を忘れさせてくれる存在。そんなロマンティックなムーンフェイズは懐中時計時代に流行していたもので、腕時計になってからは、少し忘れ去られていた機能でした。
それを再び第一線に呼び戻したのが、「ブランパン」です。1970年代に始まった電子制御のクォーツショックから立ち直るため、ブランパンは渾身の6大マスターピースを発表。そのうちの一本がムーンフェイズでした。機械式時計を諦めかけていた他のブランドもこれに続き、スイスの高級時計が復活するきっかけとなったのです。
VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)
─SINCE 1755─
2025年、創業270周年を迎えたジュネーブの古豪は、その歴史が一度も途切れることなく時計を作り続けている稀有な存在。複雑時計の名手は、機能だけでなく審美性を重んじることから、ジュネーブ・シールという厳格な品質基準を取得しています。
透明感のあるマザーオブパール(真珠母貝)のダイアルを取り囲むダイヤモンドは、リューズトップにも配置。「トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」(18Kピンクゴールド×ダイヤモンド×マザーオブパール、アリゲーターストラップ、ケース径36.5ミリ、自動巻き)1434万4000円(ヴァシュロン・コンスタンタン フリーダイヤル 0120-63-1755 URL:https://www.vacheron-constantin.com/)
一度も途切れず時計を作り続ける270年の歴史
日付表示に曜日表示を加えたものがデイデイト、さらに月表示を加えたものがトリプルカレンダーと呼ばれています。月には大と小があるため、機械式時計は手動でケースサイドのボタンを押して調整しなければなりません。これを自動で行うのがアニュアルカレンダー、さらに4年に一度の閏年まで自動調整できるのがパーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)です。時間の基準になっているのは、地球の自転。時計の精度は天文学とともに向上してきました。ユリウス暦からグレゴリオ暦へ。偉人たちが作り出した暦を正確に伝える永久カレンダーは、難易度の高い時計機能といわれています。
こうした複雑機能を最も得意とするメゾンが、270年の歴史を誇るジュネーブの名門「ヴァシュロン・コンスタンタン」。カレンダー表示に関連する特許をいくつも取得しています。

この記事の掲載号
『KATEIGAHO JOURNAL(家庭画報 ジャーナル)』
2025年6月7日発行号(非売品/Free)

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