
今年4月3日から27日まで、パリ・マレ地区の「オガタ・パリ」のギャラリーにて、仏壇仏具メーカー「アルテマイスター」のアンテナショップ「厨子屋」による展覧会「HAKO」が開催されました。宗教や文化の枠を超えて心の安らぎを見つめ直すこの試みは、現代における厨子の新たな在り方を語りかけます。
・新しい祈りの形を提案する「厨子屋」とは?→

「HAKO」展の会場として選ばれたのは「オガタ・パリ」。17世紀に建てられた貴族の邸宅を改装したこの建物には、ギャラリーのほか、茶房や酒房、和菓子ブティックなどがあり、日本の文化や感性を体現する場としてパリ市民の関心を集めています。
展覧会名の「HAKO」とは、大切なものを納める箱、すなわち厨子のこと。内にお位牌などを安置するだけではなく、想いや祈りを映し出す存在として見直すことが、今回の趣旨となっています。
会場構成を手がけたのは、オガタ・パリのオーナーであり、これまでもアルテマイスターと共同でものづくりを行ってきたデザイナーの緒方慎一郎さん。1階には陶芸家の伊藤慶二さんによる高さ5メートル超のインスタレーションを中心に、緒方さんが手がけた厨子が3基展示されました。
そして中2階では、インテリアデザイナー内田 繁さんの名作仏壇「白虹」をはじめ、アルテマイスターが世に送り出した数々の厨子が、時の流れを抱くようにゆったりと並びます。
本展は今年から3年間、春と秋の全6回、「真・行・草」をテーマに開催され、今春は「真」をテーマに、日本の伝統と精神文化を丁寧に映した作品群が、訪れる人々の心をとらえました。
「祈りとは、幸せを願うこと」。そう語るのは、同社代表取締役社長、保志康徳さん。次のページでは、展覧会の舞台裏と厨子に託した想いについて、保志さんの言葉をご紹介します。
撮影/武田正彦 本誌・坂本正行 スタイリング/梶井明美 構成・取材・文/冨部志保子