村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
小満~「鯉口シャツ」に衣替え

菊菱文様(左)や網代文様(右)など、シックな伝統柄は村雨さんのお気に入り。
新緑から次第に緑の濃さを増す「小満」へと季節が移り変わりました。二十四節気の連載を始めて、新たに知る日本語ばかり。「小満」という言葉には「あらゆる生き物が勢いよく成長して生命力に満ちる」という意味が込められているそうです。また、この時期になると秋に蒔いた麦の穂が熟し、農家の方がほっと一安心することから「小さく満足する」という意味もあるようです。
言葉の意味は諸説ありますが、とにかく街中に植物のエネルギーが放たれている感じがします。散歩をしていても、バイクに乗っていても、思い切り深呼吸したくなるような心地よさに包まれます。
鮮やかなブルーの瓢箪柄は、遠目にも爽やかな印象。

袖口の形からその名がついた「鯉口シャツ」。
「小満」の季節に行われることといえば、衣替え。学校や職場の制服は6月1日から夏服に、10月1日から冬服に変わるのが一般的ということも、日本に来て初めて知りました。梅雨を迎えると徐々に湿度が高くなるため、その前に衣替えを済ませておくという先人の教えを、僕も実践してみました。
僕の夏衣の代名詞といえば「鯉口シャツ」です。“鯉口”という名称は、袖が鯉の口のように窄(すぼ)まっていることに由来。七分袖で動きやすく、通気性にも優れているため、これからの汗ばむ季節に心地よく着ることができます。庭師の現場では仕事着として重宝していますし、デニムに合わせて普段着にも活躍しています。季節ごとの柄を買い揃えるうちに、僕のクローゼットには30枚以上も並ぶようになりました。
今日はブルーの瓢箪柄を着てみましたが、いかがでしょう。さらりとした肌触りも快適で、「小さく満足する」この時期ですが、僕としては“大きく”気持ちが満たされました。
「生地がしっかりしていて、着心地が別格」と語る村雨さんの愛用品。祭り用品などを扱う「江戸一」製。

立秋を迎える頃には、とんぼの柄などもローテーションに加わるそう。
村雨さんが見つけた二十四節気

左・「アジサイの花芽が膨らんできて、生命力を感じます」と村雨さん。右・水鏡に映える青紅葉にも万緑の季節を感じ、思わずレンズを向けたそうです。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。