ジュエリー見聞録 6月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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フォルムを重視した、メゾンを代表するデザイン
解説/山口 遼(宝飾史研究家)
「シャネル」の最新ハイジュエリーは、プリュム──羽根と名付けられたネックレスと指輪で、無色のダイヤモンドだけを用いたシャネルらしい大胆なデザインのもの。
シャネルの創始者であるガブリエル シャネルは、帽子や衣服の制作でスタートしましたが、1930年代頃には、ジュエリーの世界にも登場し、戦争直前の慌ただしい時期にもかかわらず、極めて大胆な素材の応用と、見事なデザインの作品で、注目を集めました。
1932年には、彼女の生涯で唯一のハイジュエリーの展示会を開催し、そこではこのプリュムのデザインの作品も登場しています。まあ、言ってみればシャネルというメゾンの大切なデザインモチーフの一つです。
ジュエリーのデザインは、色彩と形によって作られます。この色彩は色石やエナメルを使うことで生み出されますが、シャネルの初期のジュエリーを見る限り、彼女は、どちらかと言えば無色の宝石、ダイヤモンドとか真珠に強い関心を持っていたようで、このプリュムもその一つ。ホワイトゴールドにダイヤモンドという、色よりもフォルムを重視した作りになっています。
ネックレスの方の羽根は静止した、おとなしく柔らかな羽根に見え、指輪の方の羽根は、風に吹かれて飛びまどう羽根とでもいうのでしょうか。大胆不敵、実際に薬指に嵌めると、人差し指にまで届く、ボリュームのあるデザイン、実に面白い指輪になります。ガブリエル シャネルの大胆さを見事に引き継いだ傑作ですね。
エアリーなフォルムで、繊細さ、軽やかさを表現1932年にガブリエル シャネルがデザインしたアイコニックな羽根モチーフに敬意を表したコレクション「プリュム ドゥ シャネル」より。ネックレス3179万円(WG×ダイヤモンド×ペアシェイプダイヤモンド0.78ct) リング1628万円(WG×ダイヤモンド×ペアシェイプダイヤモンド1.03ct)ともに参考価格/ともにシャネル
●お問い合わせ/シャネル カスタマーケア TEL:0120-525-519