名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:栗花落(つゆり)
栗の花が落ちると書く名字があります。この字面からは読み方を想像することはできません。
栗は古代から日本人にはなじみの深い植物でした。縄文人は栗をすりつぶして食べていたといわれ、青森県の三内丸山遺跡からは、すでに栽培されていたと思われる栗の化石が出土しています。
栗の実がなるのは秋です。5月中旬から6月にかけて花が咲き、「栗の花」はこの頃を表す季語にもなっています。
そして、花が落ちるのは6月の中旬から下旬にかけてで、ちょうどこの頃に梅雨の季節に入るため、「栗花落」は本来「つゆいり」と読んだとみられます。
「つゆいり」という読み方は次第に短くなり、現在では「つゆり」と読みます。そして、栗花落家の本家ではさらに短くなって「つゆ」であるといいます。
この名字の歴史は古く、戦国時代の摂津国八部郡原野村(現在の神戸市北区)の領主に栗花落氏がいたことが知られています。
現在も神戸市や、瀬戸内海の小豆島などにあります。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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