〔特集〕職人技、石について深く識る もっとジュエリーを愛するために トップジュエラーたちが大切に継承し続ける、伝統の手技。そして、美的価値を高める稀少なジェムストーンへの徹底したこだわり。高度なジュエリーメイキングには、たゆまぬ努力がひそんでいるもの。秘められた舞台裏をのぞき見れば、よりジュエリーに愛着がわくはずです。
前回の記事はこちら>>・
特集「もっとジュエリーを愛するために」の記事一覧はこちら>>>
【技を知る】
メゾンの傑作に尽くされた熟練した職人による“超絶技巧”を見る
左・珪化木(化石化した古木)の模様を生かしたソートワール(ロングネックレス)。Studio Triple V © Cartier 右・シトリンにパンテールを刻んだペンダント。ともに参考商品/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Maxime Govet © Cartier
Cartier(カルティエ)
宝石に彫刻を施す[グリプティック]
紀元前のメソポタミア文明でも行われていたとされる伝統の技、それが“グリプティック(宝石彫刻)”。宝石に細やかな図像や文字を彫り刻む技術です。グリプティックのアトリエを持ち、専門の職人を抱える高級ジュエラーは、「カルティエ」くらいのものでしょう。
先端にダイヤモンドの研磨剤をつけた工具でシトリンを彫刻。失敗は許されません。© Cartier
このメゾンでは、日本の人間国宝にあたるフランス伝統工芸最高技能者、メートルダールの称号を保持するフィリップ・ニコラが長年“グリプティック”のアトリエを率い、技の継承だけでなく、表現の幅を広げるための技術的アップデートにも挑んできました。
現在アトリエを率いているのはフィリップの愛弟子、エミリ・マルク。彼女は金工芸を学んでいましたが、石に魅せられ、この世界に足を踏み入れたといいます。
グリプティックのメートルダール(フランス人間国宝)のフィリップ・ニコラとその技を継承するエミリ・マルク。© Cartier
半貴石からハードストーンと呼ばれる装飾用メノウ、化石になった古代の木までを自在に彫り上げるエミリは「石の模様や来歴が作品に生かされます」と語ります。
石と対話し、素材の魅力を最大限に引き出しながら彫るカルティエの“グリプティック”は、カメオやインタリオといった古典の枠にとどまることなく、常に新しい表現を追い求めているのです。
デザイン画に沿ってマケット(模型)を作り、珪化木をどう生かすか構想を練ります。© Cartier
(次回へ続く。
この特集の一覧>>)