〔特集〕職人技、石について深く識る もっとジュエリーを愛するために トップジュエラーたちが大切に継承し続ける、伝統の手技。そして、美的価値を高める稀少なジェムストーンへの徹底したこだわり。高度なジュエリーメイキングには、たゆまぬ努力がひそんでいるもの。秘められた舞台裏をのぞき見れば、よりジュエリーに愛着がわくはずです。
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【技を知る】
メゾンの傑作に尽くされた熟練した職人による“超絶技巧”を見る
左・ルビーの“トラディショナル ミステリーセット”でホピーの花をかたどった「グラン パヴォ」クリップ。 中央・エメラルドの“ナヴェットミステリーセット”が立体的な松ぼっくりを形作る「ポムドゥ パン」クリップ。 右・背面の構造まで巧みに隠した“ヴィトレイユミステリーセット”。ジェムストーンが透けて光を通す「ポワソン ミステリユー」クリップ。すべて参考商品/ヴァンクリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
Van Cleef & Arpels(ヴァン クリーフ&アーペル)
爪を見せない驚嘆すべき技[ミステリーセット]
名高い“ミステリーセット”は1933年に「ヴァン クリーフ&アーペル」が特許を取得した技。貴金属の爪なしにどのようにして宝石を固定しているのかわからず、まさにミステリアスだったため、賛意を込めてこの名称で呼ばれるようになりました。
隠された構造のポイントは、バックサイドにあります。宝石の背面に溝を刻み、貴金属の細いレールに溝をかませて一列ずつ宝石を固定してゆくのです。
ルビーに刻まれた溝とレールをかみ合わせて固定。
なかでもメゾンが他の追随を許さないのは“ミステリーセット”でカーブする立体的な面を作り出す技。平面に留めるよりもはるかに難しく、隙間ができないようにびっしりと宝石を敷きつめるため、職人は宝石をわずかに削って調整しながら留めなければなりません。均一な色や透明度でたくさんの宝石を揃えるのも根気のいる仕事です。
「ポム ドゥ パン」クリップ用のナヴェット形のエメラルド。
特許取得から90年以上がたった今もなおメゾンは研究を重ね、マーキース(別名ナヴェット)カットの宝石を折り重なるように留めた“ナヴェット ミステリーセット”、ステンドグラスのように透ける“ヴィトレイユ ミステリーセット”など、高度な技により、進化した美しさを生み出し続けています。
半透明の宝石を効果的に使う“ヴィトレイユミステリーセット”。
(次回へ続く。
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