〔特集〕令和に受け継がれる文化と知恵 ブーム到来、「江戸」の底力 蔦屋重三郎など多士済々だった江戸時代中期から後期は、訪れた外国人も「日本人はよく笑う」と評するほど明るい時代でした。現代の私たちがもっと元気に楽しく過ごせるヒントは、そんな江戸の人々の暮らしにありそうです。芸術や食文化、そして生活の知恵などから、今に通じる江戸の心意気を探っていきます。
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江戸を感じるエンターテインメント
学芸員の “イチ推し” 浮世絵に会いに行く
浮世絵を所蔵する美術館の学芸員の方々に、今年開催される企画展で “観るべき一作” について解説をしていただきました。
豊原国周(とよはらくにちか)《きられ与三郎 薪水》
人気役者を描いた大迫力の一作幕末~明治時代の歌舞伎や、市井の女性を描き続けた豊原国周。現代でも上演される『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』の登場人物、切られ与三郎に扮した五代目坂東彦三郎を描いた本作は、画面から飛び出さんばかりに大きく役者の相貌をとらえた構図が特徴。左上の題名の色の特徴から初期に摺られた「初摺」と推定されており、髪の毛の精緻な彫りや美しい色彩が印象的。
太田記念美術館東京都渋谷区神宮前1‒10‒10
TEL:050‒5541‒8600
「生誕190年記念 豊原国周」会期:前期2025年2月1日(土)~24日(月・振休) 後期2025年3月1日(土)~26日(水)
開館時間:10時30分~17時30分(最終入館17時)
休館日:月曜
入館料:一般1200円
喜多川歌麿《青楼十二時 続 亥ノ刻》
公益社団法人 川崎・砂子の里資料館所蔵
蔦重プロデュースのシリーズ作品吉原の遊女の一日を2時間ごとに描き分けたシリーズの一図で、午後10時頃の酒宴の様子が描かれている。背すじを伸ばした遊女は膝にキセルをついてお客に盃を差し出し、なんとも意気(いき)な姿。注目ポイントは遊女見習いの禿(かむろ)。修業中の身だが、遅い時間のためいつの間にか居眠りを始めてしまったようだ。凜とした姿の遊女との対比が印象的な一作。
川崎浮世絵ギャラリー神奈川県川崎市川崎区駅前本町12-1 川崎駅前タワー・リバーク3階
TEL:044(280)9511
浮世絵スター誕生 ── 歌麿に蔦屋重三郎、英泉・国貞まで ──会期:前期2025年4月26日(土)~6月1日(日) 後期2025年6月7日(土)~7月6日(日)
開館時間:11時~18時30分(最終入館18時15分)
休館日:月曜 ※5月3日(土・祝)~6日(火・祝)は開館、7日(水)振替休館
入館料:一般500円
三代歌川豊国(国貞)「芝居町 新吉原 風俗絵鑑」
緻密に描かれた「芝居の一日」を満喫江戸の二大悪所といわれた芝居小屋と遊里を、6図ずつの絹本の画面に生き生きと描いた肉筆画帖。驚くべき細密描写や役者の似顔の描写から幕末歌川派の重鎮・三代豊国(国貞)の作と推定される。きものの紋や模様まで克明に描いているが、単なる写実ではなく人々の熱気やその場の音まで聞こえるような情景描写が素晴らしい。
静嘉堂文庫美術館東京都千代田区丸の内2‒1‒1 明治生命館1階
TEL:050-5541-8600
豊原国周生誕190年「歌舞伎を描く―秘蔵の浮世絵初公開!」会期:前期2025年2月24日(月・振休)まで 後期2025年2月26日(水)~3月23日(日)
開館時間:10時~17時(最終入館16時30分)
休館日:月曜、2月2日(日)・25日(火)休館 ※2月10日(月)・24日(月・振休)は開館
入館料:一般1500円
葛飾北斎「今様櫛キセル雛形」

巨匠考案の「櫛」「キセル」のデザイン集「櫛の部」2冊と「きせるの部」1冊からなる図案集で、作中には約250点の櫛のデザインと、約150点のキセルのデザインが収められている。植物や動物をモチーフにしたものから、水の動き、風景などに着想を得たものまで仕様もさまざま。斬新で奇抜なデザインは、当時の職人たちに大きなインスピレーションを与えたに違いない。
北斎館長野県上高井郡小布施町大字小布施485
TEL:026(247)5206
「インフルエンサー 北斎」会期::2025年1月25日(土)~4月6日(日)
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分)
休館日:無休
入館料:一般1000円
最新技術で体感する浮世絵ワールド
生き生きと動き出す「江戸の浮世」を巡る水の表現をテーマにした「藍」の部屋、美人画と花が舞う「麗」の部屋など、約10エリアを巡りながら、浮世絵の世界に没入する体験型ミュージアム。300点以上の作品から生み出されたダイナミックな映像が楽しめる。
動き出す浮世絵展会期:2025年3月31日(月)まで
東京都品川区東品川2-6-4 寺田倉庫 G1ビル
開館時間:9時30分~20時(最終入場19時30分)
休館日:無休
入館料:一般2700円
原作品画像:©Ars Techne.corp 原作品所蔵元:山梨県立博物館
「映像×サウンド×触覚」で北斎を味わう葛飾北斎の作品と人生を描く次世代型アート・エンターテインメント。高精細の映像とサウンドに加え、床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる触覚提示技術により、北斎が生きた時代を全身で体感できる。
HOKUSAI ANOTHER STORY in TOKYO会期:2025年2月1日(土)~6月1日(日)
東京都渋谷区道玄坂1‒2‒3 東急プラザ渋谷3階
開館時間:11時~20時(最終入場19時10分)
休館日:無休
入館料:一般3500円
(次回に続く。
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