2024年7月号から作品公募を開始した家庭画報大賞。「心を込めた私の手仕事」のテーマにふさわしい創意工夫を凝らした作品が、心温まるエピソードとともに数多く寄せられました。1次、2次の書類審査を経て、審査員の方々と家庭画報編集長、協賛4社による実物審査を通過し、栄えある受賞を果たした全10作品を発表します。
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〔優秀賞〕
モチ稲わらの宝船
根来(ねごろ) 威利さん(兵庫県)

前方には、小さな七福神が乗っている。恵比寿様の釣り上げた鯛なども、緻密に作られている。
地域のボランティアで草鞋(わらじ)やしめ縄を制作したことをきっかけに、わら細工の制作に励む根来さん。力強く、立派な宝船を、お正月の飾りのために作り上げました。
材料はもち稲わらのみといたってシンプル。多様な編み方を組み合わせ、よりリアルで立体的な船のフォルムを作り上げています。船底には、しめ縄で使われる編み方を。へりには三つ編みを、帆には畳の編み方を取り入れました。

後ろに積まれた俵と小判。鼻緒のない小さな草履を作り、小判に見立てている。●長さ72×奥行き26×高さ46センチ
●審査員より「日本の伝統技術を使って新しいものを作るという難しいことに挑戦しています。七福神や俵など、一つ一つに丁寧な仕事ぶりがにじみ出ています」(藤森さん)
「日本人ならではの繊細さを感じる作品。全体のバランスも完璧です」(中山さん)
〔優秀賞〕
象人──人が象になるための装飾品──
武野 円香さん(愛知県)

耳や鼻は合計16個の象の横顔を組み合せている。それぞれ目のデザインを少しずつ変えており、表情に個性があるのも愛らしい。長く伸びるまつげや鼻は木槌と金槌で丁寧に叩き、なめらかな曲線を作り出している。●幅45×奥行き20×高さ50センチ
デザインを描いた紙を真鍮の板に貼り付け、ドリルで開けた穴から描線に沿って糸鋸で数ミリずつ金属を地道に切り抜く「透かし彫り」。大学時代にこの技法に出合った武野さんは、自分の力のみで少しずつ金属を削り出していく感覚にすっかり魅了され、趣味で10年以上も制作を続けています。本作のテーマは「象になりたいときに被るもの」。大人がすっぽり被れるサイズで作られた、ユーモアのある作品です。
●審査員より「楽しんで制作されていることが伝わってくる作品。『象になりたいとき』とは一体どんな瞬間なのでしょうか。オブジェとしても、人が被っても使えるという発想も面白いです。緻密な細工の技術も素晴らしい」(コシノさん)
〔優秀賞〕
夢の扉
大熊 紹詮さん(埼玉県)

10層の木枠に黒と銀の糸を縦横に張り巡らせ、奥行きを表現。中央から上部は透明で、5~6層目の下部は、京劇の衣装を貼り込んでいる。
「古いものを作品に取り入れることで、新たな命を吹き込みたいと思いました」と話す大熊さん。SDGsの観点からも高く評価された本作は、身近にある素材を見事に組み合わせたアート作品です。張り巡らされた糸に貼り付けられているのは、使い終わった竹箒を洗い、5センチほどに切り刻んだパーツ。古布や、お盆に自宅で飾ったほおずきの葉脈などがそのパーツを彩ります。捨てられるはずだったものたちを、アイディアと努力で再生させた大作です。
組み合わせる色や素材を変えて数え切れないほどのパーツを制作し、バランスを見ながら貼り付ける。
側面にはアフリカのドゴン族の衣装の一部を。ひし形のパーツは、奥様の不用になった帯を切り貼りしたもの。●幅90×高さ182×奥行き15センチ
●審査員より「繊細な手仕事とそれをやり遂げる労力に感服。身近なもので複雑なものを作り上げた、豊かな発想力に驚きました。時間や場所によって 光の入り具合や見え方が変わる、『夢の扉』というタイトルにふさわしい作品」(中山さん)
・明日は、協賛社賞に選ばれた4作品をご紹介します。
〔創刊800号記念 家庭画報大賞展〕
栄えある受賞を果たした全10作品を展示する「家庭画報大賞展」を開催いたします。皆様のご来場をお待ちしております。
●会期
2025年2月19日(水)~3月4日(火)
●会場
日本橋三越本店 本館5階 ライトウェル特設会場
東京都中央区日本橋室町1-4-1
電話 03(3241)3311
営業時間:10時~19時
・入場無料