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歯を失うと、死亡リスクが高くなる。最新研究で分かった「歯と健康寿命の関係」

2025.03.14

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知っておきたい女性のからだと健康 第3回(2)「虫歯治療の詰め物が外れた」「歯肉が腫れている」とわかっていながら放置している人は少なくありません。しかし、そのままでは歯を失い、全身の健康や社会参加への意欲にも影響する可能性があります。歯の状態と健康や社会参加との関係について、東京科学大学 大学院医歯学総合研究科教授の相田 潤先生(歯科公衆衛生学)に伺います。前回の記事はこちら>>

「歯の健康」

歯の状態の悪化は、孤食や閉じこもり、認知症を招きやすい。虫歯や歯周病を予防・治療して歯の本数を減らさないことが重要

[お話を伺った方]
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野 教授
相田 潤先生
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野 教授 相田 潤先生

あいだ・じゅん 2003年北海道大学歯学部卒業後、国立保健医療科学院専門課程、北海道大学大学院歯学研究科博士課程を修了。東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野助教、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン客員研究員、東北大学大学院歯学研究科准教授等を経て、20年から東京医科歯科大学(現・東京科学大学)大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野(現・歯科公衆衛生学分野)教授。

歯の本数が多いほど健康寿命が長くなる

歯の本数の減少は死亡リスクを上げる要因として上位に位置しています(22年、下図)。

“現在の歯の本数”は死亡の大きな要因となる

Nakazawa N, et al. Large contribution of oral status for death among modifiable risk factors in older adults: the JAGES prospective cohort study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2022.を編集部で改変

Nakazawa N, et al. Large contribution of oral status for death among modifiable risk factors in older adults: the JAGES prospective cohort study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2022.を編集部で改変

人口寄与割合(Population Attributable Fraction:PAF)は、疾患や生活習慣などの死亡リスク因子の健康への影響の大きさと、集団内でリスク因子を持つ人の割合を考慮して計算するもので、数値が大きいほど死亡要因となる影響力が大きいことを表す。相田先生の研究グループは日本老年学的評価研究機構の2010年調査(対象者は31市町村約11万人)を6年間追跡したデータを使い、世界で初めて口腔疾患のリスクの人口寄与割合を報告した。同じ調査で調べられている高血圧や抑うつ、糖尿病、脳卒中などの疾患、飲酒や喫煙などの生活習慣、教育歴や等価所得(世帯可処分所得を世帯人数で割ったもの)などの社会的な特性などを含めて分析したところ、「現在の歯の本数と死亡との関連が強いことがわかりました。これは虫歯や歯周病に罹患して歯を失う人が多く、リスク因子として大きく働くためであると考えられます」(相田先生)。


また、全国24自治体の要介護認定を受けていない高齢者の追跡データから、男女とも歯の本数が多いほど健康寿命が長く、要介護度2(食事や排せつはできるが一部は介助が必要で、爪切りや着替え、立ち上がりや歩行が困難)以上の状態となる期間が短いことがわかりました(17年)。

日本の65歳以上の15万人超の歯の状態と食事時の状況を調べたところ、歯科補綴物(ほてつぶつ)(入れ歯や詰め物など)を使っていない歯が10本未満の人は、20本以上の歯が残る人よりも一人で食事をする割合が高かったのです(21年)。


「孤食は死亡や抑うつのリスクを高めます。私たちの別の研究でも孤食が体重減少につながることが明らかになりました。3年間で5パーセント以上の体重減少があると死亡リスクが上がります」。残っている歯の本数や、咀嚼が困難、むせやすい、口の渇きといった症状の有無を聞き、6年後に調べた研究では、歯の本数が20本未満の場合、20本以上の人の1・42倍、咀嚼が困難な人はそうではない人の1・28倍、閉じこもりやすいことがわかりました(21年)。

別の研究では、口臭の強い人は認知症になる割合が高まると報告しています(24年)。これは05〜06年の歯科の検診データから56〜75歳の約1500人を16年まで追跡調査した結果です。検診時に医師が口臭検査を行い、重度の口臭のある群は約10年間での認知症の発症率は20・7パーセントで、口臭なしの群に比べると発症リスクは4・44倍になっていました。

これらの研究を統合すると、「歯が20本未満になると野菜や果物が摂りにくくなり、体重が減少し、閉じこもりやすくなって孤食が増え、友人との交流も減って、認知症を発症するリスクが高まると考えられます」と相田先生。

入れ歯などで嚙める歯の本数が保たれていても口腔ケアは欠かせません。

65歳以上の総入れ歯や部分入れ歯の使用者で地域在住の約7万人を対象にした研究で、毎日入れ歯の手入れをする人を基準とすると、毎日手入れをしない人の過去1年間の肺炎のリスクは1・3倍、75歳以上では1・58倍でした(19年)。「高齢者の死亡原因の上位である誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが重要です。歯磨きや入れ歯の手入れを毎日行い、日々のケアでは取れない歯石や入れ歯の汚れを歯科で除去してもらってください」。

取材・文/小島あゆみ

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