連載「いのちに想う」2月 産卵
ニホンアカガエル
文=小林朋道(公立鳥取環境大学学長・動物行動学者)私が勤務する大学には「ヤギ部」という学生サークルがあり、キャンパスの広ーい放牧地で五頭ほどのヤギが自由に暮らしている。
いっぽう、そのヤギの放牧地の中には、かつて、部員たちがつくった池もあり、二月という寒い時期にも拘わらず、キャンパス林から雪の中を移動してやってきたニホンアカガエルが産卵をした。
そんな雪原の池の中に、オスが一匹ずつ入れ替わり立ち替わりやってきて、立ち去っていくメスが産んだ卵塊を守るかのように、複数の卵塊に寄り添った。
一度、そんなオスが、あまりにも水が冷たかったのだろう、卵塊の中であおむけになって事切れていた。でも幸いに、その時産まれていた卵は、オタマジャクシになって池から旅立っていった。そうやってアカガエルは何世代も何世代も命をつないでいるのだ。
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