連載「言葉の道しるべ」2月 思いやり
選・文=深澤直人(デザイナー)客観写生は俳人、高浜虚子が称えた言葉だ。私的感情を伝えようとして主観的に詠まれる句は醜い。その場の現実をそのまま描写することによって、作者の心情が自然に暗示され心や情景が伝わるということと理解している。
つまり、自分の作品の如く主観を露出させて演出せず、ただそこにある事実を伝えるだけで伝わるものがある。自らの作品においても、客観的に自己の作品を捉えるということは他者の目で作品に対峙することだ。あらゆるものを客観的に捉え、人が自然に感じることのできる顕著な感覚の境地に身を置くことこそ、思いやりのある作品に行き着けると信じている。自分自身のことも客観的に見つめる時間を作ってみると、世界の見え方が変わってくるかもしれない。
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