連載「千年の文様の教え」
2月「梅」
選・文=八條忠基(「綺陽装束研究所」主宰)春、真っ先に美しく咲き薫るのが梅。奈良時代に唐から白梅が薬用植物としてもたらされ、王朝貴族たちはたちまちその芳香に魅せられました。元号「令和」は、天平2(730)年に大宰帥(だざいのそち)・大伴旅人が開催した「梅花の宴」で詠まれた詩に由来します。
梅枝襷(うめえだたすき)

散梅花(ちりばいか)に梅折枝(めおりえだ)
紅梅はそれより遅く、平安時代初期に渡来したと言われています。白梅よりもさらに早く咲く紅梅は、何よりもその美しい色彩と初春を寿ぐ風情が賞美されました。
梅丸(うめのまる)

八重梅丸(やえうめのまる)
旧暦では2月が正月に当たります。今年も例年どおりに春が来て、美しい花を楽しめる。そのことに大きな喜びを感じた王朝貴族たちは、紅梅を「新春の花」と位置づけて、その色や文様を正月の諸行事に用いたのです。
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