つらくて不安なあなたに伝えたい「私の介護体験」第2回 ぎりぎりまで在宅介護を頑張り、母を施設に入れたことへの罪悪感も乗り越えてきた安藤優子さん。「老いを受容し、忘れることを許してあげよう。親を見る目も穏やかになるはず」と語ります。戸惑い、悩み、出会いに感謝しながら、母と向き合った末に辿り着いたのは優しさに溢れる境地でした。
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臨床美術との出会いが導いた一つの答え「忘れたっていいじゃない」
安藤優子さん(キャスター・ジャーナリスト)

安藤優子(あんどう・ゆうこ)さん 1958年生まれ。上智大学卒業。同大学院修了、グローバル社会学博士号取得。1980年代より各局のテレビ報道番組においてレポーター、キャスター等を務め、国内外の歴史的場面を現地で取材し伝えてきた。87年からはフジテレビ系「FNNスーパーニュース」「直撃LIVEグッディ!」などで活躍。2023年より椙山女学園大学客員教授に就任。現在、関西テレビ「newsランナー」、TOKYO MX「企業家たちの挑戦ストーリー」に出演中。
70代半ばで始まった母の変化。父を亡くし認知症が一気に進む
とにかく明るくて社交的。意気揚々と自宅に人を招き手料理でもてなす。旅行も買い物も大好き。何にでも興味を持ち積極的にチャレンジする──。アクティブを絵に描いたような母・みどりさんに異変が生じたのは70代半ば。何かにつけ億劫がるようになったのです。
「料理が大の得意だったのに面倒がって市販のお惣菜ですませるようになり、水泳やヨガの教室も休みがちに。おかしいなと思いつつ、当時は認知症という言葉すらなかった時代。高齢者特有の症状だろうと深刻には捉えていませんでした」と安藤優子さんは振り返ります。
みどりさん70代の頃、旅先のイタリアで優子さんと。「元気だった頃はよく一緒に海外旅行にも出かけました」。
運動量が減ると筋力も衰え、夜中に廊下で転倒。家族が救急車を呼んだことに対して「近所の手前恥ずかしい」と怒り、部屋に閉じこもるなど心配な言動が目立ち始めます。介護認定を受けヘルパーさんを頼んでも「もう来なくて結構」とやめさせてしまう始末。「母にとって台所は聖地。他人が勝手に入って冷蔵庫を開けて料理を作るなんて許せなかったのでしょう」。
やがて一大事が起こります。共に暮らしていた父に膵臓癌が見つかり、半年後に他界。みどりさんの症状は一気に進みました。