〔特集〕心の渇き、悲しみ、迷いに効く 今、大人に届けたい絵本 「絵本は人生に3度。子ども時代と、親になったとき、人生後半に読んでほしいのです」とノンフィクション作家の柳田邦男さんは語ります。年齢を重ねたからこそ、絵本の根底にある深い意味がわかるようになり、人生を振り返るきっかけになるのだと。今、心が何かを求めている人、悲しみの中にある人 ──。大人になった今だからこそ絵本で心の潤いを取り戻し、生きる力の再生へとつながる出会いを体験してください。
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絵本はもちろん絵も魅力
人気絵本作家・くらはしれいさんインタビュー
絵本作家 くらはしれい岐阜県在住。書籍の挿画、パッケージのイラスト、オリジナルグッズ制作など幅広く活躍。絵本に『しまさんとこねこねハンバーグ』(河出書房新社)、『こねこのトト』(白泉社)など。『王さまのお菓子』(世界文化社)は第55回造本装幀コンクール出版文化産業振興財団賞受賞。 可愛い女の子や動物の絵で、多くの女性を魅了するくらはしれいさん。挿画を手がける絵本も数多くあるなか、初の自作絵本として上梓されたのが『こねこのトト』。
『レミーさんのひきだし』作/斉藤 倫・うきまる 絵/くらはしれい 小学館 1540円
役目を終え、引き出しにしまわれた空箱や花束のリボンなどの小物たち。次はどんな役目を担うのか、不安と期待の中で待っていると……。
『王さまのお菓子』作/石井睦美 絵/くらはしれい 世界文化社 1650円
フランスの伝統菓子ガレット・デ・ロワの中に隠された小さな人形が主人公。登場人物それぞれのやさしさに温かな気持ちになれる絵本。
『こねこのトト』作・絵/くらはしれい 白泉社 1540円
6匹の猫と女の子の一日を描く、猫好きにはたまらない一冊。猫の仕草や行動に、猫を飼っている人は「あるある!」と共感できるはず。
乙女心を呼び覚ますメルヘンな世界へ
「初めての自作絵本は、大好きな猫をテーマにしたい」と思っていたというくらはしさんは、今も5匹の猫と暮らす大の猫好き。
「『こねこのトト』は、我が家の猫の日常を描いたような絵本。制作の間は本当に毎日幸せで、気がつけばいつも微笑みながら描いていました」と目を細めながら話すその表情には、猫への深い愛情が溢れていました。
愛猫は創作の源であり癒やし
『こねこのトト』の主人公のモデルとなった、くらはしさんの愛猫トトちゃん。
絵本にとどまらず文具やファブリックなどさまざまな雑貨にもなっているくらはしさんのイラスト。その独特な色使いとタッチ、女の子の夢と憧れを集めたような世界観は、どのように形作られてきたのでしょう。
それには、「昔から古い絵本や、ヨーロッパの本の表紙や絵の雰囲気が好きだった」ことも影響しているといいます。
「本に限らず、何でも可愛いものや、やさしいものに目がなくて。普段、好んで着ている服もレースが使われていたり、襟が大きくてスカラップになっていたりするものが多いんです」。
まさにそれは、『王さまのお菓子』の中でくらはしさんが描く少女や人形のミリーのドレスそのもの。「自分の“好き”を、そのまま絵にしている感じですね(笑)」。
『王さまのお菓子』に登場するガレット・デ・ロワとくらはしさん所有のブライス人形。
さらに、くらはしさんには収集の趣味もあるのだとか。
「“ブライス”という人形や、人形専用の小物もたくさんあって。コレクターですね。可愛いと思ったものは何でも集めてしまうんです。それこそ、お菓子の箱やリボン、ジャムの瓶まで」。
収集といえば、くらはしさんの絵本『レミーさんのひきだし』の主人公も、チョコレートの箱や包装紙、毛糸玉などのお気に入りを引き出しにしまって……というストーリー。
「そうなんです。何でもしまってしまうレミーさんは、自分と重なる感じがしました(笑)。私も可愛い箱や瓶が大好きなので、その絵を描くのはとても楽しかったです」。
くらはしさんを惹きつける可愛くてやさしい世界は、絵本や雑貨の絵となって生まれ変わり、それを手にする多くの人の心を再びときめかせています。
くらはしれいさんの一筆箋が『家庭画報』2月号(通常サイズ版)の付録に!

『くらはしれい おてがみBOOK 花と子ども16Postcards・32Letter Papers』(世界文化社)のイラストが一筆箋に。家庭画報本誌読者の皆様のお手もとだけに届くオリジナルデザインです(
通常サイズ版のみの付録)。お世話になった人、大切な人への贈り物に添えて。
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